世界中の食卓から「ウナギ」が消える現実度 国際自然保護連合は「深刻な危機」に分類する

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3番目の選択肢は、IUCNが主な評価法として用いているもので、発想の転換をして、サルガッソー海でのウナギの秘密のランデブーの結果を――レイチェル・カーソンが「親ウナギが残した忘れ形見」と呼んだものを評価する方法だ。

つまり、春にヨーロッパ沿岸部に現れるシラスウナギの個体数を判断基準とするのである。シラスウナギについては、銀ウナギに比べてずっと多くのことがわかっていて、それらのデータは、ウナギの危機的状況を示唆している。信頼できるすべての数字が、今現在、ヨーロッパ沿岸部に到達するシラスウナギの数は、1970年代の終わり頃のおよそ5パーセントにすぎないことを示している。

近い将来本当に消えるかもしれない

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私が子どもの頃に毎年川を上ってきた小さなガラス棒のようなシラスウナギが仮りに100匹だったとすれば、今同じように川を上るシラスウナギはせいぜい5匹程度だということになる。

これが、IUCNがヨーロッパウナギを「深刻な危機」に分類した根拠である。

IUCNの公式の定義によると、「野生絶滅の非常に高いリスクに直面している」という意味だ。ウナギが置かれているこの状況は、破滅的であると同時に深刻な問題でもある。ウナギは、近い将来、本当に消えてしまうかもしれない。

それもわれわれ人間の視界と理解の範囲からだけでなく、われわれが暮らすこの世界からも。

パトリック・スヴェンソン ジャーナリスト

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Svensson,Patrik

1972年生れ。スウェーデンの日刊紙「シズヴェンスカン」で芸術・文化担当記者を務めた後、執筆に専念。2021年1月現在は家族とともに同国南部のマルメに住む。『ウナギが故郷に帰るとき(The Gospel of Eels)』が初の著作。

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