世界中の食卓から「ウナギ」が消える現実度 国際自然保護連合は「深刻な危機」に分類する
人類は順調だ。ホモサピエンスについてのIUCNの直近の評価である2008年リストには、次のように書かれている。
「非常に広範囲に分布し、適応力があり、目下のところ個体数が増えている。この種は、低懸念に分類される」。
また次のような記載もある。「人類は、地球上の哺乳類のなかでも、最も広範囲に分布し、地球上のあらゆる大陸に生息している(ただし、南極大陸に永住する個体はいない)。少数の人類は宇宙にも行ったことがあり、そこでは国際宇宙ステーションで暮らしている」。
IUCNの評価によると、今のところ「いかなる保護策も必要としない」。ホモサピエンスは繁栄しているのだ。
ウナギが危機に直面する理由
一方ウナギは、ヨーロッパウナギは、危機に直面している。少なくともそう考えるに足る理由がある。状況からそのように考えられる。言うまでもなく、ウナギに関しては、われわれ人間は、知っている、と確信をもっていうことはできない。いつものように、ウナギの危機についても条件つきの理解しかできない。
というのも、IUCNが通常用いている評価基準がウナギには当てはまらないことがわかったからだ。第1の問題は、ウナギの全体的な個体数が正確にわからない、ということだ。個体数は、当然、その種がどの程度絶滅の危機にあるかを決める際の、第1の基準である。
しかし、IUCNの報告書には、個体数は「生殖可能な個体」、つまり、完全に成長した、性的に成熟した個体の数とすべきであり、したがって、「産卵場にいる成熟したウナギ」の個体数を基準に判断することが望ましい、と書かれている。
言い換えれば、サルガッソー海にいる銀ウナギの数を数える必要がある、ということだ。しかし、100年以上前から努力が続けられているにもかかわらず、誰1人として、たった1匹の銀ウナギさえ見つけていないのだから、それが不可能なのは明らかだ。ウナギは、そうやすやすと自分の居場所を人に知らせない。援助の手を差し伸べようとしている人々にさえ姿を見せない。
もしかすると、ヨーロッパ沿岸部から産卵場を目指して出発する成熟した銀ウナギの数を数えることならできるかもしれない。しかしやはり、データが少ないという問題がある。ウナギは、深海にすばやく姿を消してしまう習性をもっているからだ。いずれにせよ、これまでの観察結果は、回遊の旅に出る銀ウナギの数が、過去45年間に、少なくとも50パーセントは減少していることを示唆している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら