「サントリー天然水」圧倒的に愛される納得の訳

30年で34倍、日本の飲料水市場は急拡大した

かつて「日本人は水と空気と安全はタダだと思っている」という言葉が話題を呼んだ。ベストセラーとなった『日本人とユダヤ人』(イザヤ・ベンダサン著)の一節で、発売されたのは半世紀前の1971年。イザヤ・ベンダサンは山本七平氏の筆名といわれる。

同書の発売後、特に「水と安全はタダ」の部分がクローズアップされて、今でも時々用いられる。当時は水資源が豊富な日本で、水を買う人はほぼいない時代だ。現在はどうだろう。水は買って飲むようになり、警備などの安全も有料が当たり前の認識となった。

「天然水」のブランド責任者である平岡雅文氏(筆者撮影)

冒頭で紹介した飲料水(カテゴリーではミネラルウオーター)市場は、同数字では2011年から300万キロリットルを超えた。これには、あの大災害が影響している。

「東日本大震災が発生し、被災地以外でも備蓄意識が高まったのです。水は常備すべきライフラインと認知され、買ってもすぐ飲まないで大半を保管する消費者が増えました。その後も、台風や大雨などの自然災害が各地で相次いでいます。昨年からのコロナ禍もそうですが、社会不安になると2リットルの大容量の飲料水が売れる傾向にあります」(平岡氏)

災害時の備蓄飲料は水だけではない。栄養の偏りを気にする人も増え、スーパーの店頭では野菜飲料も「防災用品」として売られていた。

ファッションから生活必需品となり、価格も下落

小売店に行けば、ペットボトルの飲料水が簡単に買える時代だ。昔に比べて価格も驚くほど安くなった。価格下落も飲料水需要を高めているのではないか。

「むしろ消費者意識の変化が先だと思います。1980年代後半から1990年代は輸入水がブームで、前掛けホルダーに輸入水を入れて、街や観光地を散策する人もいました。

やがて水道水のカルキ臭やマンションの貯水タンク汚れなどもクローズアップされ、飲料水はファッション的要素から、より生活に密着した存在となります。頻繁に飲むなら『国産のほうが安全で安心』という意識が高まり、『水を飲むことは健康によい』と考える消費者も増加。飲料水の参入プレーヤーも増えた結果、価格が安くなったと考えています」(同)

1995年にはシェア30.5%にまで伸びた輸入水だが、2019年は9.0%。一時代を担った「ボルヴィック」は2020年末で国内販売を終えた。

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