少子化でも「ランドセル」売上高が拡大の必然 コロナ禍で気軽に試せるレンタルの登場も

拡大
縮小

2022年入学者向けモデルの発売を2月26日から開始したのは1919年創業の業界大手・セイバン(兵庫県たつの市)だ。コロナ化対策として、同社は試着アプリを導入した。

「天使のはねランドセルの試着アプリ『TRY SEIBAN』では、一度の撮影で100種類以上あるランドセルの試着が簡単にできます。ダウンロード数は3月10日現在で数千件に達しています。(3月10日時点)〝離れて住んでいるおじいちゃん、おばあちゃんに見てもらえて良い〟〝子どもが欲しいと思っているランドセルが写真で明確にわかるので安心できる〟といったお声をいただいています」(セイバンの担当者)

保護者同士のリアルなコミュニケーションが減ったとの声を受けてSNS上ではランドセル選びのコミュニケーションを行えるよう10組の家族による「天使のはねアンバサダー2022」という取り組みも行っている。

リアル店舗での販売はもちろん、オンラインでの製品選び、販売に各社力を入れているのが今年の特徴だ。

少子化に向けた打開策のカギは海外

少子化が続く状況にもかかわらず〝高額化〟と〝6ポケット〟で金額ベースでは市場規模が拡大してきたランドセル業界だが、この状況がいつまでも続く保証はない。数年後には新1年生はついに100万人を割り込む。それどころか、2019年に86万人に急減した出生数は、2021年はコロナ禍の影響もあってさらに落ち込み、80万人台を割り込むといった衝撃的な予測まで出ている。まさに大変革期に突入しているのだ。

国内市場は確実に縮小していく。その打開策の1つとして注目されているのが海外マーケットだ。数年前、ハリウッドの女優でファッションリーダーのズーイー・デシャネルがパパラッチに撮影されたプライベートでのランドセルを背負った写真が話題となり、海外で大人向けファッションとしてランドセルブームが沸き起こった。

ドイツで販売しているバックバッグ(写真:セイバン提供)

フランスでは日本アニメの影響もあり、それ以前からショーも開かれていたという。インバウンド客が表参道のショップで買い求める姿もあった。

コロナ禍でインバウンドが消え、ブーム自体も一過性だったようだが、それでも海外に需要はあると睨んだいくつかのメーカーは、世界各地でビジネス展開を始めている。前出のセイバンもその1社だ。

同社は2018年から中国を中心としたアジア圏でランドセル販売を展開。そして昨年8月、同社初の海外ブランド「SICOBA」を立ち上げ、ドイツでのオンライン販売を開始した。SICOBAは大人向けバックパックブランドで、たつの市の工場で製造、ドイツに輸出して現地パートナー企業が販売している。価格は399ユーロ(約5万円)など。初年度の滑り出しは順調だという。

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