ワクチン登場で激変「買われる株」と「ダメな株」 下り坂をずり落ちるコロナ禍のスター銘柄

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経済の見通しが明るくなるにつれて、コロナ禍好調だった銘柄の株価が下がり始めている。アップルの株価はこの1カ月で11%下落した(写真:Jim Wilson/The New York Times)

コロナ禍で経済が大打撃となる中、テクノロジー企業とデジタル関連の消費者企業は成長株として際立った存在感を放っていた。

ところが、新規感染者数や死者数が下降曲線を描き、アメリカの予防接種が1日当たり200万人を超えて全体的な経済見通しが明るくなると、投資家の関心はこれら「コロナ銘柄」とは別の場所に向かうようになった。

ファイザーワクチンの登場で一変

コロナ関連としてもてはやされていた中小型株はこの1カ月間で大きく値を下げた。ビデオ会議システムのズーム、自宅フィットネスのペロトンの株価はそれぞれ22%、24%下落。ズーム株は昨年10月につけた最高値の半値近くにまで下がっている。巨大テクノロジー企業の下落はそこまでではないが、それでも地合の変化と無縁ではない。例えば、アップル株はこの1カ月で11%下落した。

ヘッジファンドのポートフォリオマネジャー、デビッド・リーダーマン氏によれば、そもそもの転機は昨年11月9日にさかのぼる。ファイザーが企業として初めて、極めて有効性の高い新型コロナワクチンを開発したと発表した日だ。「経済活動の再開と経済の回復という、私たちが現在目にしている状況の始まり」を告げる発表だったとリーダーマン氏は話す。

アメリカの経済成長率は今年5%を超えるとエコノミストたちは予想する。行動制限が和らぎ、経済が正常化に向かう中、人々の選択肢は増している。授業、食事、会議、買い物のいずれも「対面」が選択肢に入ってきた。こうした動きは、アマゾンやズームといったデジタル関連企業の成長をどの程度ペースダウンさせるのか。不透明感が広がる。

アナリストらによると、投資家の関心はエネルギー、銀行、ホテル、航空など旧来型のセクターに少しずつ移行しつつある。デルタ航空、ユナイテッド航空、アメリカン航空といった大手航空会社の株価は、ファイザーがワクチンの高い有効性を発表する前週末(11月6日)の終値から50%以上上昇した。

債券市場の動きもテクノロジー株の重しになっている。景気回復がインフレと利上げにつながるとの予想を背景に、債券市場では利回りの拡大(つまり債券価格の下落)が続いている。そのため投資家の間では債券やハイテク株を売って、今後の景気回復局面で恩恵が期待できるオールドエコノミー銘柄を買う動きが見られる。

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