世界の舞台で自分の考えを話せるかどうか 三井物産・槍田会長×ライフネット生命・出口会長(2)

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中国にGDPを抜かれて自信喪失?

――なんで日本はそこまで社会の裕度が下がってしまったんでしょうか。

槍田:やっぱり金融資本主義というか、すべての成功はおカネに裏打ちされるものだというような価値観が蔓延しているからではないでしょうか。おカネが儲からないようなことに打ち込んでいると、「あいつはたいしたことない」ということになってしまう。社会に認められないと親も心配だから、そうならないように育てる。

出口:僕もそれに近い考えです。日本は戦争に敗れて焼け野原になったわけですが、戦後の日本人にとって国の立て直しの目標は、アメリカだった。すなわち、GEやGMなどアメリカの製造業であったと思います。つまり鉄鋼・電力を復興して、自動車、電気、電子産業を作れば復活できると。キャッチアップ型経済です。

キャッチアップモデルは目標に追いつこうとするときは強さを発揮します。でもそうすると、アメリカのモデルが絶対的になってしまう。

1980年代になって、日本は一応キャッチアップを達成します。1人当たりGDPではアメリカを抜きました。でもモデルがひとつだけだったら、それ以外のパターンは考えにくいですね。本当はキャッチアップを済ませたときに、あらためてこれからどんな社会、どんな国をつくっていくかということを考えるべきだったのでしょう。しかしバブル崩壊などいろいろなことがあって、新しいモデルをつくる余裕がないまま経済が弱くなっていき、「貧すれば鈍す」で閉塞感が強まってきたのかもしれません。

これは間違っているかもしれませんが、僕はGDPで中国に負けたことが、けっこう大きいのではないかと思っています。日本人は戦争に負けたけれど、GDPは世界2位という誇りがあった。経済はどこにも負けないというのが日本人のアイデンティティのひとつだったのに、中国に負けてしまった。でも冷静に考えれば、中国は人口が日本の10倍なので、絶対量で負けるのは当たり前です。

そういうことが重なって、なんとなく閉塞感みたいなものが生まれたのかな、と漠然と思っています。でも、これはやっぱりちゃんと分析したほうがいいと思いますね。

(構成:長山清子、写真:大澤 誠)

※ 続きは7月4日に掲載します。

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

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