ジャガー・ランドローバー「純EVじゃない」電動化 ランドローバーは燃料電池車に新たな道を探る

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筆者個人の意見として、ジャガーの全車EV化という道は正直さほどの驚きはない。今のブランドの置かれている状況からすれば、グズグズしている暇はないといったところだろうとは容易に想像できる。ただし、充電所要時間だったり、インフラ整備だったり、あるいは真の意味でのカーボンニュートラルの実現可能性といった意味では、バッテリーEVへの一本化という方策は疑問符なしとはしない。

一方、ランドローバーのFCVへの参入にはもろ手を挙げて賛成したい。少なくともリチウムイオンバッテリーを使ったEVは、ある程度以上のサイズになると車重が半端じゃなく増加してしまい、とても効率的だなどとは言えない。FCVのほうが軽量に作れるのは間違いないし、充填所要時間の短さ、航続距離の確保しやすさもプレミアムカーにはふさわしい。しかも、再生可能エネルギーのバッファとして最適で、可搬性に優れた水素の利用は今後ますます増えてくるはずで、そこには大きな可能性があるように思う。

バッテリーEV化が唯一絶対の正解ではないが

何を隠そう筆者は以前トヨタMIRAIを所有しており、今はランドローバー レンジローバー スポーツに乗っている。FCVのレンジローバーが出たら、これこそ完璧と今から期待が高まっている……というのは余談である。

冒頭で世界の自動車メーカーは目下、電動化の波に巻き込まれていると書いたが、実際にはメーカーによってその狙いも、実際に取る方策も技術も、こうしてそれぞれ異なっている。決して画一的なバッテリーEV化が唯一絶対の正解であるわけではなく、実際に起きているわけでもないのだ。その中でもジャガー・ランドローバーの戦略はとても興味深いものだし、今後の展開が注目に値するものであることは間違いない。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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