アンチエイジングに「苦痛と回復」が必要な理由 人生100年時代を健康で過ごす秘訣とは

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一方で長引く炎症は、私たちに悪さもします。切り傷のように数週間で治る症状ならいいのですが、感染症や糖尿病などで体のダメージが慢性化すると、血管や細胞が傷つけられ、人体を内側から老化させていきます。体を若々しく保つには、長期の炎症はできるだけ抑えるにこしたことはありません。

そこで役に立つのが、私たちの体に生まれつき備わった炎症抑制システムです。このシステムの生物学的な全容はまだ明らかではありませんが、体内の脂肪酸やミネラルを使って働きはじめ、さまざまな手立てを講じて炎症の慢性化をブロック。体内の炎症を鎮めてくれるだけでなく、将来のダメージに備えて肉体を強化してくれます。結果、私たちの体は若返るのです。

要するに、ポリフェノールが若返りに効くのは、次のようなメカニズムによります。

1. ポリフェノールが体内で少量の毒として働き、体内に軽度の炎症を起こす
2. 炎症に反応して人体の抑制システムが起動し、肉体のダメージを修復
3. ダメージ修復のプロセスで、さらに肉体が若返る

ポリフェノールが体に小さなダメージを与えたおかげで、あなたが生まれながらに持つ心身の若返りシステムが働き出すわけです。

このようなポリフェノールの作用は、「ゼノホルミシス」と呼ばれます。「ゼノ」はギリシャ語で「外から来たもの」を意味し、いわば私たちは植物の「苦痛」を取り込むことで、間接的に自分の肉体を若返らせているのです。

「苦痛」と同じくらい重要な「回復」のフェーズ

「ハードに訓練せよ。しかし、それ以上にハードに休憩せよ」という格言が、アスリートの世界にはあります。体を鍛えるには厳しいトレーニングが欠かせないが、それ以上に「回復」のフェーズが重要だという経験則を言い表した言葉です。

『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトへジャンプします)

いかにアンチエイジングには「苦痛」が不可欠だといっても、つねにストレスを抱えていたら心身が病むばかりでしょう。「苦痛」を若返りの源に変えるには、回復のフェーズが欠かせません。

筋肉の成長がいい例です。ご存じのとおり、筋肉量を増やすためには、トレーニングで筋繊維を傷つけたあとの適切な休憩と栄養補給が必須。休憩をはさまずに運動を続ければ筋繊維を修復する時間が得られず、ほどなく限界に達した肉体は、さまざまなレベルの不調を訴え始めます。

アンチエイジングにおいて苦痛と回復の重要度はまったく同じであり、どちらが欠けても心身の若返りはうまくいきません。

わかりやすく言えば、苦痛と回復はそれぞれ次の役割を受け持っています。

1. 「苦痛」は若返りシステムを起動させる
2. 「回復」は若返りシステムを実行させる

苦痛の刺激で若返りシステムが立ち上がっても、それだけであなたの心身が強化されることはありません。続けて正しい回復をはさまねば、若返りシステムは働いてくれないのです。

いわば「苦痛」と「回復」はアンチエイジングの両輪です。一方だけを重んじないように、心がけましょう。

鈴木 祐 サイエンスライター

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すずき ゆう / Yu Suzuki

1976年生まれ、慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。近年はヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。著書に『最高の体調』(クロスメディア・パブリッシング)、『ヤバい集中力』(SBクリエイティブ)他多数。

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