アンチエイジングに「苦痛と回復」が必要な理由

人生100年時代を健康で過ごす秘訣とは

その点で、現時点でもっとも有効な考え方が「ホルミシス」です。1888年にドイツの科学者ヒューゴ・シュルツが見つけた現象で、ある日、博士は少量の毒物がイースト菌の成長を加速させているのを発見。不思議に思った博士は調査を進め、こんな結論を導き出します。

「すべての物質は、少量であれば刺激し、適量であれば抑制し、多量であれば殺傷する」

生き物にとって本来は有害なものでも、ほんの少しならいい効果をもたらすこともある、というわけです。

以降も似たような発見は続き、1943年には、免疫学者のチェスター・オウサムが樹液の毒で菌類の成長スピードが上がる事実を確かめ、ギリシャ語で「刺激」を意味する「hórmƒìsis」にちなんで、この現象を「ホルミシス」と名づけました。つまり、ホルミシスの要点をひとことでまとめると、「多すぎれば有害だが、少なければ有益に働く作用」のようになります。

なぜ「サウナ」で劇的に死亡リスクが下がるのか

実は、私たちのまわりにはホルミシスがあふれています。例えばワクチンの仕組みなどは、ホルミシスの典型例です。ご存じのとおり、ワクチンは毒性の弱い病原体や抗原を体内に送り込み、人間が生まれ持つ防御システムを活性化させることで、また同じ病原体に襲われても病気にかからない体を作り上げます。

フランスの細菌学者ルイ・パスツールは、この仕組みを「強い病気を起こすものから弱い病気を起こすものを人工的に作り出し、それをワクチンにする」と表現しました。まさにホルミシスの原理そのものでしょう。

より身近なところでは、サウナもホルミシスの代表的な例です。70度以上の高温に身をさらすと、私たちの体は深部の温度が上がり、心拍数が平均で120bpmまで増えます。これは軽いジョギングなどで起きる変化に近く、おかげで心臓や血管の改善につながっていくわけです。

その健康効果には一定の評価があり、フィンランドで約2300人を対象に行われた研究では、週に2〜3回サウナを利用する男性は、サウナを使わないグループと比べて心臓や血管の病気で死ぬリスクが27%減少、週の利用度が4~7回だった場合は、死亡リスクがさらに50%まで下がっていました。

別のデータでも、サウナで認知症やアルツハイマー病のリスクが65%も減ることが示されており、なんとも驚くべき数値と言えるでしょう。それもこれも、サウナが運動の効果を疑似的に再現するホルミシス・マシンとして働くからです。

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