日本通運とヤマトHDを分析する 運輸大手は、人手不足に勝てるのか?

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eコマースが発達すればするほど、物流量が増えるでしょうから、ヤマトは積極的に投資を行っているのでしょう。特に、同社はネット通販大手のアマゾンなどの配送を引き受けていますから、今後の輸送需要の増加を見越しているという部分もあると思います。

今期の業績は過去最高予想だが、賃金上昇に注意

では、今期の業績は、どうなるのでしょうか。ヤマトの業績予想によりますと、営業収益は4.5%増、営業利益は10.9%増になると見通しています。特に営業利益は、9年ぶりの過去最高となる見込みです。

この自信の理由は、3つあります。1つ目は、値上げによる採算の改善です。同社は3月、法人顧客に対して配送料金の値上げを要請しました。これによって、採算をよくしようという狙いもありますが、サービスの品質を保つという理由もあります。前期は、温度管理問題や輸送量の急増によってコストがかかってしまいましたから、今期は取扱量が増えても対応できるように、設備や人員を増やそうと考えたのです。

2つ目は、今年も引き続き、国内景気が緩やかに回復すると見ていることです。ヤマトは日通よりも国内比率が高い会社です。全体の営業収益のうち、日本が98.2%を占めていますから、景気回復の好影響を受けやすいのです。

3つ目は、先ほども触れましたが、インターネット通販の需要拡大です。以上の理由から、ヤマトの今期の業績は伸びると予想されますが、マイナス要因もあります。例えば、今は有効求人倍率が1倍を超える水準まで雇用環境が改善していることから、人員が確保しにくくなっています。賃金を上げないと、なかなか人が集まらないのです。このように、売上高が増えても利益が伸びにくい要因もありますので、次回以降の決算には少し注意が必要です。

小宮 一慶 経営コンサルタント

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こみやかずよし / Kazuyoshi Komiya

小宮コンサルタンツ代表取締役CEO。大企業から中小企業まで、企業規模や業種を問わず、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、講演や新聞・雑誌の執筆、テレビ出演も行う。著書に『「なれる最高の自分」になる方法』『ビジネスマンのための「習慣力」養成講座』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』(日本経済新聞出版社)、『株式投資で勝つための指標が1冊でわかる本』(PHPビジネス新書)など。

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