では、どの事業が好調だったのでしょうか。地域や事業ごとの収益をまとめたセグメント情報(26ページ)によると、最も伸びているのは、国内会社のうち自動車や鉄道を利用した一般貨物輸送や倉庫業にあたる「複合事業」。これは売上高全体の約4割を占める主力事業です。外部顧客への売上高(内部間の取引を差し引いた売上高)は、前の期より3.2%増の7146億円。セグメント利益は114.1%増の151億円と大幅に伸びています。一方、その他の事業は航空、海運、米国事業は増益、警備輸送などのそれ以外事業は、それほど変わらないか減益となっています。
売り上げこそ増えたが、海外事業の利益は伸びず
海外事業だけをとらえると、売上高は軒並み増加していますが、米国を除くその他の地域では減益になっています。
つまり、国内の複合事業が全体の業績を押し上げたということです。ここが好調だった理由はふたつあります。ひとつは鉄鋼や自動車などの製造業の原材料輸送が増えたこと。もうひとつは、インターネット通販の市場が拡大し、物流量だけでなく倉庫業の需要も伸びたことです。
昨年度は円安が進みましたから、海外事業が伸びているのではないかと予想していたのですが、結果は違いました。たしかに円安の影響から、海外の売上高の円換算額は増えたものの、原価がかさんでしまって利益は伸びなかったのです。
ただ、企業の財務的な安全性という面では問題ありません。貸借対照表(13~14ページ)から、中長期的な安全性を示す自己資本比率(純資産÷資産)を計算しますと、37.0%となります。これは十分高い水準です。
最後に、キャッシュフロー計算書(20ページ)から投資の状況を調べてみましょう。ここでは、建物や運送用の自動車などの設備投資額を示す「固定資産の取得による支出」と、資産の価値の目減り分である「減価償却費」を比べます。通常は、減価償却費と同じくらいの再投資をしないと、現状の事業を維持できません。
固定資産の取得による支出は421億円、減価償却費は471億円ですから、ほぼ減価償却費と同じ規模の再投資をしていることが分かりますね。
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