日本通運とヤマトHDを分析する 運輸大手は、人手不足に勝てるのか?

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もう少し詳しく見てみましょう。セグメント情報(28ページ)から事業ごとの収益を調べますと、外部顧客への営業収益(売上高)は、どの事業も軒並み伸びています。ところがセグメント利益は、全体の営業収益の約8割を占める主力のデリバリー事業が、前の期より14.4%も落ち込んでいるのです。ヤマトが減益になった原因は、ここです。

ヤマトHDの設備投資は高水準(羽田クロノゲートで、撮影:尾形文繁)

なぜ、デリバリー事業は大幅に利益を落としたのでしょうか。理由は大きく分けて3つあります。1つ目は、輸送需要が急増したために、人員や配送車を一時的に確保しなければならなくなったからです。

2つ目は、大雪の影響です。今年2月、大雪で関東甲信越地方を中心に交通網が混乱する事態がありました。そこで配送を遅延させないように、人員や配送車を臨時で増やしたため、費用が膨らんだのです。

3つ目は、昨年10月に起こったクール宅急便の温度管理問題です。保冷用コンテナの扉を長時間開けたまま仕分けされていたケースが明るみに出て、改善するように指導されたのです。再発防止のために、品質管理の責任者を配置したり、管理カメラを設置するなどの費用が膨らみました。

ただ、財務的には非常にいい会社です。自己資本比率は54.3%ととても高い水準ですから、安全性には全く問題はありません。

もうひとつ注目したいのは、設備投資の状況です。日通の分析と同じように、キャッシュフロー計算書(18~19ページ)から有形固定資産の取得による支出を調べますと、652億円。これに対し、減価償却費は422億円ですから、ヤマトは減価償却費を大きく超える設備投資をしているということが分かります。

この投資は、アジアと日本の間の輸送をスムーズにするために羽田に物流ターミナルを建設したことと、国内の主要都市間で当日配達できるようにするために厚木にハブを建設したことが大きな理由です。

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