ANAは、機内での感染防止対策にも全面的に協力した。フライトアテンダントのマスク着用はもちろん、座席を1つずつずらして座り、隣同士での食事を避けるためにミールサービスに時間差を設けるなどの措置にも応じた。
このほかの感染防止措置として、国内移動は新幹線の号車を分け、一般の人との接触をなくす。駅構内の移動についても、あらかじめ動線を調べたうえで、要所要所に誘導スタッフを配置して一般客との接触を断つ。誘導スタッフはサントリー本体にも応援を依頼し、宿泊先のホテルとコンサートホールへの移動も、大型のシャトルハイヤーを使用する。
また、ホテルはフロアごと貸し切り、使用するエレベーターホールにはスタッフが立って、一般客との接触をブロック。滞在中の食事は隔離された場所でとってもらう。
加えて、日本入国前の陰性証明の取得、および入国時の新型コロナウイルス検査、滞在中は宿泊施設とコンサートホール間の移動以外の外出を行わない、毎日の検温をはじめ、コンサート時以外の常時マスク着用、全員のスマホに接触確認アプリ(COCOA)のインストール、日本で接触した全関係者の記録の確認。当然、これらの感染防止措置は、関係各所の協力なくして、貫徹できない。
サポートする日本側スタッフも、全員が新型コロナウイルス検査を行い、それ以外の人はウィーン・フィルのメンバーと接触しないという取り決めをした。なにしろ、観客100%の公演を目指す以上、並々ならぬ努力が求められた。
観客を迎えるシミュレーションを重ねた
サントリーホールは、満席の観客を迎えるにあたってのシミュレーションを幾度となく積み重ねた。開場からの限られた時間にエントランスから入ってくる観客に対して、どうしたらスムーズに手指の消毒をしてもらい、体温を測ることができるか。
何台の消毒器が必要なのか、体温測定をするスタッフは何名必要なのか。観客の入場から退場の動線はどうなのか。シミュレーションを繰り返し、何度も詰めの作業をしたうえで、機材の検討を行った。
「感染防止には、万全の自信がありました。これは実験ではなくて、絶対に感染を出さずに公演を実現するための体制です。ですから、やれるという自信がありました」
と、白川氏は胸を張った。
結局、2つのことを実行するに尽きるというのだ。折井氏は語る。
「何をするか、それをどうできるかの2つだと思います。その2つがセットになって初めてかなうことだと思うんですね」
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