「刀」の森岡氏が男性化粧品会社を支援する理由 「世界一のブランド」を創るには何が必要なのか

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――よく「ベンチャーキャピタルには金はあるけどノウハウがない」、一方でコンサルタントも「戦略は描くものの、どう実現するかとなると心許ない」と言われます。

これは私自身が刀というベンチャーを起業した経験からも思うことなのですが、日本のベンチャービジネスにとって「何が根源的に足りていないのか」というと、お金ではありません。

お金の出し手はいくらでもいるのですが、肝心の「ビジネスを成功に導くためのノウハウの出し手」が圧倒的に足りていないのです。

起業した人たちは皆、明日どうなるかも分からない状況のなかで、本当にヒリヒリした危機感を持って経営をしています。だからこそ、本当に困った局面にぶつかった時、一緒に解決方法を考えてくれる人を求めているのです。

最近は、注目されているビジネスで成功して、数十億円、数百億円のお金を手にしたような人が「エンジェル」を名乗って、ベンチャー企業に出資したりするケースをよく目にします。

価値を継続的に生み出すためのノウハウと資金を支援

確かに、それだけのお金を手にした才覚は凄いのかも知れません。しかし事業を継続させ、長期的に企業を成長させていく能力やノウハウを本当に持っているのかどうか、よくわからない人も少なくありません。まさに自称エンジェルです。

しかし「お金だけ出して、出資先の企業の上場という『出口』だけを待つ、というのでは、結局、自分が儲けることしか考えていないのも同然ですし、そう簡単にうまくいきません。応援するというのは、そのベンチャー企業が価値を生み出せるように応援する。そのために自分たちが持っているノウハウ、能力をすべて移植する。こうして会社が成長したら、結果的に儲かることもあるでしょう。でも、儲けることが目的なのではなく、あくまでも結果です。

事業を興し、続けていくうえで大事なのは「価値を生み出すことへの強い想い」です。その想いに人が集まるのです。価値を生み出すための強い想いがあり、それを実現させたいという気持ちが多くのアイデアを生み出します。

そのノウハウを本気で提供していきたいというのが、今の私たち刀の想いです。本当に日本のためになる、未来のためになる事業を、ノウハウと資金の両面で応援していきたい。ベンチャービジネスは、良い時もあれば悪い時もあります。そのいずれの時にも、ブレることなく、哲学に則って、自ら掲げた「日本をマーケティングとエンターテイメントで元気にしたい」という大義に、どこまで近づけるか。そこを理解して、ノウハウと資金の両面で応援できる主体になりたいと思います。

                      (取材協力:鈴木雅光)

前編「日本の企業はブランドの本質を知らなさすぎる」  

福井 純 東洋経済 記者

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ふくい じゅん / Jun Fukui

「会社四季報オンライン」編集部長。『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報プロ500』『株式ウイークリー』『オール投資』編集長、「東洋経済オンライン」編集部長、証券部長を経て現職。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)、日本テクニカルアナリスト協会理事

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