菅首相の「宣言延長」を後押ししたある危機感 小池都知事主導の宣言解除というトラウマ

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菅首相には、年明け早々に小池氏主導の要求に押されて、1月7日の宣言再発令に追い込まれた「苦い経験」(政府筋)がある。今回も「小池氏らの要請を受ける形で方針転換すれば、指導力が問われかねない」(同)との懸念から、あえて要請を待たずに表明に踏み切ったとみられている。

ただ、与党内には「またしても小池氏の策謀にはまっただけ」(閣僚経験者)と突き放す声もある。そもそも、「国民にとって首相と小池氏の先手争いなど、何の意味もない。政治不信を加速させるだけ」(自民長老)だからだ。

海外の観客受け入れに慎重姿勢

五輪開催問題については、五輪組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)などによる初のトップ級5者協議も3日夜に開催された。海外からの観客受け入れは、聖火リレーがスタートする25日までに決めることで大筋合意。観客数の上限などは、「4月中に判断する方針」(丸川珠代五輪担当相)が固まった。

丸川氏は協議の中で「政府としては、この時点で海外からの観客について、入国の可否を見通すことは非常に難しい。慎重な判断が必要だ」と発言。橋本聖子組織委員会会長も「国民に不安がある以上、安心と安全が保たれる実感がないと難しい」と述べたうえで、「私としては25日までに(海外からの観客受け入れの可否を)決めたい」と明言した。

その後、多くのメディアは3日夜までに「政府が海外からの観客受け入れ見送り方針を固めた」と報道した。併せて与党内には「結局、五輪は無観客での開催しかないのでは」(自民幹部)との声も広がる。

もし無観客開催となれば、改めて「何のための五輪か」といった五輪反対論が拡大するのは必至。菅首相が繰り返す「人類がコロナに打ち勝った証しとしての五輪開催」という主張は、「完全な絵空事」(立憲民主幹部)に終わりかねない。

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