お金を忌避する人に知ってほしい「伝説の講演」 思想家・内村鑑三が100年前に説いた生き方

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あるリバイバルに熱心な牧師の先生に私の思いを話したところ、ひどくしかられました。「金を遺したいと思うなんて、情けない。金なんかどうにでもなるから、君はキリスト教の教えを広めるためだけに働きなさい」と言うのです。そう言われても、お金を遺したいという思いは変わりませんでしたし、今でも変わっていません。

お金を遺すという考えをいやしいという人は、その人自身がいやしい人だと思います。ここでお金の価値について長々と講義をするつもりはありませんが、お金が必要であることは、みなさんも十分に実感されているだろうと思います。

お金は天のものだから、お金なんていつでも手に入るという人に、フランクリンは「それなら今お金を出してみせなさい」と言いました。私に金など要らないと言った牧師の先生は、後で聞いたところ、実際にはずいぶんお金に執着していたのだそうです。

お金などいつでも手に入れられるというのは、よくある考えですが、実際お金が必要になってから、手に入れようとするのは非常に難しいものです。財産を築くということは、神様の力を借りるくらいのことがなければ、並大抵の思いや努力ではできないことなのです。

社会問題も教育問題も、究極はお金の問題

ちょうど秋で雁(がん)が空を飛んでいます。雁は誰でも自由に捕まえられますが、捕まえるのは簡単ではありません。手の中に雁が10羽、20羽と集まってきたなら、それこそ価値があります。別の鳥の例で言えば、自分の手の中にいる1羽の雀は、自分の手の届かない木の上の2羽の雀より尊いものだということなのです。

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事業で財産を築いて、後世の人が使えるようにしたいという願いをみなさんが持っているなら、私は心から共感して、イエス・キリスト、父なる神、そして聖霊という3つの尊いお名前を借りて、「教会や国や世界のためにどうぞ財産を築いて下さい」と強く奨励します。

財産を築くというのは大事業です。今日の問題は社会問題であろうと、教会問題であろうと、青年問題であろうと、教育問題であろうと、究極的にはお金の問題です。それなのに、お金が不要などと言うことはできません。キリスト教徒のなかに、事業家で資産家の人が現れればありがたいし、キリスト教の志をよくわかった人が、私たちの後ろ楯になって、金銭的に支援してくれるのは大変重要なことです。ですから、財産を後世に遺そうという志を持っているなら、その志に従って、神が与えてくれた方法によって、子孫にたくさんお金を遺してほしいと、私は切実に願っています。

内村 鑑三 思想家

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うちむら かんぞう / Kanzo Uchimura

1861年生まれ、1930年没。思想家。父は高崎藩士。札幌農学校卒業後、農商務省等を経て米国へ留学。帰国後の明治23年(1890)第一高等中学校嘱託教員となる。24年教育勅語奉戴式で拝礼を拒んだ行為が不敬事件として非難され退職。以後著述を中心に活動した。33年『聖書之研究』を創刊し、聖書研究を柱に既存の教派によらない無教会主義を唱える。日露戦争時には非戦論を主張した。主な著作は『代表的日本人』、『余は如何にして基督信徒となりし乎』など。

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