科学者が夏には元の生活に戻れると考える根拠 アメリカで急浮上した楽観論の前提にあるもの
「地域の医療が逼迫しているのを目にしたり、近くで感染が広がっているという話を耳にしたりして、人々は自主的に行動を変化させている」というわけだ。「それが理由で状況が改善しているのだとしたら、減少傾向はあっという間に増加傾向に転じうる」(ワイリー氏)。
従来型の新型コロナによる感染が減少傾向をたどっていることで、イギリスで初めて確認された変異株「B.1.1.7」による感染の急増が覆い隠されていると話す研究者は多い。「実際には2つの流行曲線が存在する」と言うのは、トロント大学で感染症予測モデルを専門とするアシュリー・トゥート氏だ。
感染力だけでなく、致死性も高まったと考えられている変異株B.1.1.7によるアメリカでの感染は1月13日時点では12州72件だったが、現在では45州に広がり、1800件を超える数にまで増加してきている。アメリカでは変異株の監視体制が十分に整っていないため、実際の感染者数はもっと多いだろう。
誤った自信が変異株に火を付ける
にもかかわらず、各州の知事は全体の感染者数が減ってきていることに自信を深め、制限解除に動きつつある。完全再開を求める圧力も高まっている。仮に完全再開となれば、B.1.1.7をはじめとする変異株による感染が爆発的に増加する公算が大きい。
「物事がせっかく正しい方向に進んでいるのに、ここで政治的な圧力に屈したら、長期的な代償はかえって大きくなる」とトゥート氏は話す。
取材した科学者の大半が、3月下旬〜4月には感染の第4波が来ると予想している。ただ、政府と個人があと数週間にわたって対策を維持し続けるなら、第4波は避けられないわけではない、とも科学者は強調する。
アメリカ国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長はこう言った。「私たちは今、状況がよくなるか悪くなるかの分岐点に立っている」。
(執筆:Apoorva Mandavilli記者)
(C)2021 The New York Times News Service
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら