ゲームストップ騒動に重なるバブル崩壊の記憶 ブラックスワンか、それとも市場のカナリアか?
問題は、バブルだとわかっているのに、なぜバブルが崩壊しないかだ。世界中の金融当局が監視の目を光らせて、バブルが崩壊しないようにコントロールしているから、といっていいだろう。今回のゲームストップ・ショックも、即座にアメリカの金融当局が動いて、株価操縦の疑いで公聴会を開催した。
2月18日、個人投資家によるネット掲示板での呼びかけが相場操縦に当たるかどうかを審議するために、ロビンフッドのブラッド・テネフCEOをはじめとして、関係者が公聴会で説明を求められた。テネフCEOは株価操縦の意図は否定したものの、売買を停止したことは謝罪した。
さらに「シタデル」創業者のケン・グリフィン氏、カラ売りで莫大な損失を出したヘッジファンド「メルビン・キャピタル」のゲイブ・プロトキンCEOなどが招聘され、それぞれ「株価操縦」との指摘を否定した。
今回のゲームストップ株暴騰によるイベントは、27億5000万ドルともいわれるヘッジファンドの損失を埋めるために、ゲームストップ株以外の株式が相次いで売られ、市場全体が大きく揺らいだことが問題となった。イエレン財務長官も即座にコメントを発表するなど、対応の素早さが目立った。
その背景には、過去にもヘッジファンドなど莫大なポジションを運用している機関投資家の破綻が原因で、市場全体が崩れた歴史が数多くあったからだ。簡単に列記すると、次のようなケースが該当する。
「ヘッジファンドの破綻」は市場のカナリア?
大陸横断鉄道のノーザン・パシフィック(NP)鉄道の株価を巡って、複雑な株式の買い占め競争が起き、当時としては破格の200ドルまで高騰。その段階で証券会社や金融機関から資金を集めた投機筋がカラ売りを開始する。
しかし、その後も株価は上昇を続けて1000ドルまで暴騰。借金によってNP株をカラ売りした投機家は、他社の株式を売って借金返済に走ったために市場全体が大暴落。ニューヨーク証券取引所開設以来の大暴落となり、1901年恐慌と呼ばれた。ショートスクイーズによって市場全体が影響を受けた今回のゲームストップ・ショックと似ている。
1997年のアジア通貨危機や翌年のロシア財政危機が引き金となって、ヘッジファンド「ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)」が経営破綻。金融機関から集めた資金47億2000万ドルが焦げ付き、金融危機に陥る恐れがあった。LTCMが、世界中のあらゆる金融市場で鞘を稼ぐスプレッド取引を実施していたことから、世界恐慌に陥る可能性も指摘された。アメリカの中央銀行FRBが3カ月間で3回も政策金利のFFレートを引き下げるなど、国家を上げて保護した。LTCM危機は、ヘッジファンドが世界恐慌に発展する可能性を示した最初の事例となった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら