ゲームストップ騒動に重なるバブル崩壊の記憶 ブラックスワンか、それとも市場のカナリアか?
日本にはない投資法だが、個別株を特定の価格で買う権利(コールオプション)、売る権利(プットオプション)を売買するもので、少ない金額で多額の売買ができる。ウォールストリートベッツで個人投資家にゲームストップ株の買いを推奨した人物も、コールオプションを使うことで株価の引き上げをあおったと批判される。
ショートスクイーズによって、カラ売り戦略を打ち砕かれたヘッジファンドだが、今後ヘッジファンドがバタバタと破綻していくようなことになれば、世界中を巻き込んだ金融危機が襲いかねない。ゲームストップ株をカラ売りしていた「メルビン・キャピタル」は27億5000万ドル(約2887億円)もの融資を受けたと報道されている。ヘッジファンドの破綻は、これまでにも数多くの経済危機や金融危機を引き起こしてきた。
これらのキーワードを理解したうえで、今回のゲームストップ・ショックを総括すると、現在の株式市場がいかに「買い材料」に飢えた相場になっているかがわかるはずだ。材料さえあれば、実体のない企業でさえも、株価が上昇する状態になっている。
人間はAIの高速売買に太刀打ちできない
さらに注目したいのは、現在の機関投資家やヘッジファンドは、コンピューターのアルゴリズムを使った自動売買を使って売買している現実がある。人間が考えて投資をする従来の投資方法では、AI(人工知能)による高速売買に太刀打ちできない。
例えば、ヘッジファンド同士の戦いを見ても、そのヘッジファンドが使うコンピューターの性能によって、運用で得られるパフォーマンスが違ってくる。処理スピードの高いコンピューターはむろんのこと、通常の光ファイバーの3分の1の通信時間で済む中空光ファイバーケーブルを使うなどマイクロ秒単位での勝負が常識になっている。技術革新についていけないヘッジファンドは負けてしまう。個人投資家にショートスクイーズで負けたヘッジファンドが、今後生き残れるかかなり疑問だ。
いずれにしても、個人投資家が株式売買の短期勝負で勝てる時代ではないということだ。ゲームストップ・ショックは、さまざまな材料がミックスしてたまたま個人が瞬間的に勝つことができたが、そう簡単に奇跡は起きない。
そもそもショートスクイーズ事態、そう珍しい投資戦略ではない。今回、ゲームストップ株が急騰できたのは、現在の市場が流動性の高いバブルだったからこそ成立したものであり、個人がプロに勝ったことが「ブラックスワン」だったといっていいだろう。
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