ゲームストップ騒動に重なるバブル崩壊の記憶 ブラックスワンか、それとも市場のカナリアか?
2007年7月31日、サブプライム住宅ローン証券を大量に購入していた投資銀行べアー・スターンズ系のヘッジファンド2社が経営破綻。その後、リーマンショックに発展したことはよく知られているが、このヘッジファンド2社の経営破綻は、現在でも「炭鉱のカナリア」だったと言われている。
炭鉱では、人間よりも早く酸欠や微量の毒ガスに気づくカナリアの入った籠を持って現場に向かう。ヘッジファンドの破綻は金融市場全体の「異変」を知らせる「市場のカナリア」というわけだ。
バブル崩壊は当局の目の届かないところで始まる?
今回のゲームストップ株によるブラックスワン的イベントでは、いまのところ経営破綻したヘッジファンドは現れていないし、預託金不足で個人投資家の売買を一時的に停止したロビンフッドも、資金調達の道はすぐに開かれた。
どの銀行や証券会社の“金庫”にも資金は潤沢にあるようだ。したがって、今回のゲームストップ株を巡るイベントが「市場のカナリア」になる可能性は低いのかもしれない。とはいえ、2008年9月に起きたリーマンショックを振り返っても、ベアー・スターンズ系のヘッジファンドが経営破綻してから、リーマン・ブラザーズが破綻するまで1年以上を要した。
しかも、現在の金融市場はコロナによるパンデミック対策として、世界中の政府や中央銀行がバブルを崩壊させないように監視している。そんな中で、バブル崩壊が起こるとすれば、当局の目の届かない場所でのバブル崩壊であり、破綻がきっかけになると考えられる。例えば、現在もリアルタイムで凄まじいバブルを形成している投資対象が数多くある。いくつか例を挙げると──
テスラがビットコインを資産に組み入れると発表しただけで、あっけなく1BTC=5万ドルを突破。いまや10万ドルの声さえ聞こえるようになった暗号資産だ。今回のゲームストップ現象は、暗号資産の世界では日常茶飯事と言われる。オンライン掲示板など個人投資家が結託して、流動性の少ない暗号資産にショートスクイーズを仕掛ける取引が続いている。プロの投資家に打ち勝つ構図は仮想通貨が源流ではないか、とウォールストリートジャーナルも指摘している。
冗談として創られ、実用性がまったくない暗号資産「ドージコイン」は、起業家のマーク・キューバン氏が「宝くじかドージコインのどちらかを買わなければいけないとしたら、ドージコインを買う」とツイートして、その後ドージコインの価格は12時間で50%上昇。今年に入ってから1300%も上昇した。実体のないものに投機筋のマネーが集まって価格が乱高下するのは、過去にもよくあった。17世紀のオランダのチューリップ恐慌もそのひとつだ。
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