「見た目外国人」の彼が職務質問受けやすいなぜ 「外国人=違法行為をしている」という先入観
ノーベル賞とピュリツァー賞を受賞したアフリカ系アメリカ人の作家トニ・モリスンは「ホワイトゲイズ」という言葉を作った。黒人は一定のレベルでつねに自分の人種を代表していると意識している。黒人である自分の行動は、 広義の意味で類似しているだけの人も含め、同じ人種と見なされている人々が皆同じようにするはず、と他人が期待する行動例として認識されてしまう。
黒人にしてみれば自分たちはそれぞれお互い明確に違い、多様であるのに、他人を肌の色でラベル付けする自らの怠慢さを許す贅沢のある人々は、黒人というステレオタイプに基づいてラベル付けをする。
これは表側さんや、彼と類似する外見を持つほかの多人種の血を引く日本人の場合にも当てはまるだろう。そして、同一人種であるという幻想に誇りをもっている日本社会では、避けることのできない「他人化のレンズ」を通して見られているのだと非常に強く意識せざるを得ない。
動画を撮って共有することの意味
こうしてじろじろ見られてしまう事態は、表側さんが受けた職務質問のように、いわゆる権威を持った人が介在するとより強いものになってしまう。そうした時に、撮影することは一種の自己防衛、保障になり、その存在を知らない人に対して、じろじろ見られることは現実として起きている、と示すことができる。
しかし、表側さんはもう1つ、異なる形で動画が役に立つかもしれないと期待している。
「日本の警察にハラスメントを受けた友達はたくさんいますよ」と表側さんは言う。「動画が拡散して嬉しく思っています。この問題に対する認知度が上が上がるのは素晴らしいことです」。
「でも、この動画を何かの運動を立ち上げるためのものにしたいとは思っていません。個人的には友達の多くが思ってるほど、このことを悪く思っていないからです。日本で生まれてよかったと思っていますし、日本語も英語もネイティブです。だから自分の面倒は自分で見られます。でも同じような目にあっている多くの人は、そこまで恵まれてない。多人種で多文化の背景を持つ警察官や通訳を多く採用して、非日本人の人を援助できるようになるといいなと思います」
こうしたタイプのハラスメントが止まらない理由の1つは、私が思うに、外国人、いや全ての黒人が同じことを体験しているわけではないからだ。アフリカ系アメリカ人である私の体験は、実は表側さんのものとはほぼ正反対なのである。
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