太田雄貴「スポーツ協会の補助金依存は問題」 フェンシング協会が考える新たなマネタイズ法

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協会が直接クラブを運営したら、ほかのクラブとぶつかってしまう。だから協会としては、各クラブへの流入が増えるような施策を打ち出す必要がある。現在、協会では各自治体の学校を訪れ、子どもたちの前で模擬試合を披露して、その楽しさを伝える活動を行っている。

が、このほかにもやり方はありそうだ。例えば、サバイバルゲームあるいはスポーツチャンバラのように、低いハードルでフェンシングを体感できる方法を用意する。公園などに簡易なピストを作り、フェンシングが行える場所を設ける。いっそのこと、フェンシングをテーマにしたアニメや漫画、ゲームを作ってみては……。空想は広がるが、太田氏の胸中でも、すでにそうした考えは温められているのだろう。

勝つために「やらなければならないこと」が多い

太田氏はアジア大会、世界選手権、オリンピックのメダリストであり、一流のアスリートだ。しかし話の端々に、非常に優れたビジネスセンスを感じる。ことの本質をピンポイントで見抜き、瞬時に突く。これはフェンシングという競技の第一線に居続けたことと無関係ではないのではないか。

「そうでしょうね。フェンシングは勝つために『やらねばならないこと』が多いんです。自分のマイナスを知り、プラスに転化する。勝つために勝負を組み立て、結果を出す。相手の弱点を攻め、自分の得意な技をぶつけ続ける。そうした競技特性は、事業でも活かせると考えています」

では具体的に、どのようなビジネスを手がけるつもりなのだろうか。これについて太田氏からは、明確な答えはなかった。ただ、ビジネスに対するスタンスは、すでに決まっているようだ。

「やりたいことをやり、理想を目指す、というのも1つの方法です。でも私は『これから伸びる領域を、掘って掘って掘りまくる』というのが、性に合っていると思っています。自分が勝てる領域、勝てるパターンを見極めて、勝ちに行く、というスタイルです」

このビジネスに対する考え方も、太田氏自身のフェンシングスタイルが投影されているようだ。

「今は日本フェンシング協会会長として活動していますが、それも次へと引き継いでいかなくてはならない。そうなった時、ビジネスを興して利益を上げていれば、協賛企業として外部からフェンシングを支えることができます。そうした未来もいいな、と思っています」

まだ35歳という若さと、4年弱の間に積み上げた実績。一歩一歩、目標を定めて前に進んでいく堅実さ。ビジネスの世界に「太田雄貴」の名が鳴り響くその時は、遠いことではないかもしれない。

中村 伸人 スポーツコミュニティ代表

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なかむら のぶと / Nobuto Nakamura

1974年生まれ、神奈川県出身。学生時代体操競技で全国大会などにも出場。大学院修了後、スポーツ専門学校の教員となり、学生募集をする広報担当として入社当時200人だった学生数を3年間で1200人に増やした経験を持つ。2002年、スポーツコミュニティ株式会社設立。体操教室で全国展開を続ける。

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