太田雄貴「スポーツ協会の補助金依存は問題」 フェンシング協会が考える新たなマネタイズ法

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渋谷なら交通の便が良く、都内はもちろん都外からのアクセスも悪くない。地方在住の人にとっては「東京に行く動機」になる。2日間開催と合わせて集客増が見込めるし、「渋谷公会堂を日本フェンシングのメッカにしていく」というメッセージも加えた。

太田氏はまた、フェンシングの試合に最新テクノロジーを導入して、観客への「見せ方」にも手を加えた。その1つが、「フェンシング・ビジュアライズド(Fencing Visualized)」の導入だ。

フェシング・ビジュアライズドを導入した試合の様子(写真:日本フェンシング協会提供)

フェンシング・ビジュアライズドとは、モーションキャプチャーとAR(拡張視覚)技術を使って、試合中の選手の剣先の軌跡をモニターや放送に表示する技術。これによって、従来見えにくかった剣先の動きや軌跡がわかりやすくなった。一瞬の剣さばきで勝負が決するフェンシングでは同技術を使ったリプレイ画像は観客の理解を助けるし、何より視覚的に美しく、わかりやすい。

「フェンシング・ビジュアライズドをそのまま判定に使うというのは、まだ難しそうです。フェンシングの判定は同時に突いていても優先権がどちらの選手にあるのか審判の目で判断してどちらかに加点を行う種目もあるため、試合のプレイバック時に会場や放送で使ってはどうか……という交渉は、引き続き行っています」

周辺のテクノロジーは確実に進化しているとのことだから、リプレイではなくリアルタイムでフェンシング・ビジュアライズドを楽しめる日も遠くはなさそうだ。

競技人口を増やすというハードル

マネタイズ、集客と並んで、競技団体が考えなくてはならないのが、競技人口の増加である。これら3つの課題はいずれも密接に関係しているから、1つでもおろそかにできない。裾野を広げる方法としては、選手強化に予算をかけるというのも一手だ。

フェンシング協会もかつてその収入のほとんどを選手強化にあてていた。世界トップレベルの外国人コーチを招聘し、選手を強化していく。人件費が収入に占める割合は、すべての競技団体の中でも上位という規模。「完全に風呂敷を広げすぎている状態」(太田氏)という。その背景には選手を強化して実績を作る、つまりメダルの色を上げると同時に数を増やし、競技の注目度を高めたい、という考えがあった。

しかし、その他の道もあるのではないか。太田氏は、6000人だったフェンシング協会の登録者「5万人にまで引き上げたい」という発言もしている。何か秘策があるのだろうか。

「これはちょっと、風呂敷を広げすぎたでしょうか……。でも協会内でも一致団結でき、一枚岩となって目指せる、わかりやすい数字を設定する必要があったんです。ただこれは、いろいろな視点から考え、複数の手法を組み合わせていくしかありません」

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