世界最速級ワクチン接種!イスラエル驚異のDX 「ゼロリスク志向」こそ日本の最大のリスク

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日本では病院、クリニックはそれぞれが独立した医療法人であり、医師やスタッフの雇用もその法人との個別契約ということになる。各病院で用いる機器、設備も各法人が独自で調達することになるが、HMOの場合は、Clalitが14の病院、1400のクリニックのための機器、設備を集中して購買することが可能になる。消耗品の在庫管理もClalit全体で行えるので、その購買力の強さと効率性は明白だろう。

医師、医療スタッフ、医療情報もHMOに組織化されているので、例えば、難しい症例に出会った場合も、専門家への相談、類似事例の共有、医療スタッフ同士での情報交換も可能になり、迅速に的確な対応策を見つけることが可能になる。場合によってはリソースの再配分も可能になる。

デジタルインフラが支えるロジスティクス

『「乳と蜜の流れる地」から 非日常の国イスラエルの日常生活』の著者であり、現在テルアビブ大学で教鞭を取っている山森みか氏は、ご自身のワクチン接種の経験を詳細に公開している。

山森氏は、4つのHMOのうち、規模が最も大きなClalitの会員だ。イスラエルでは昨年12月19日からワクチン接種が始まったが、その翌日にClalitから予約をするように携帯電話のメッセージに指示が届いたそうだ。

予約はアプリか電話とのこと。山森氏はアクセスが集中して重くなった予約システムに何度もトライし、やっと2月中旬の予約を取ったが、もう少し早い予約取得を試みる。少し遠方のアラブ人居住区にあるクリニックで1月1日に1回目を、22日には2回目をもう少し近いクリニックで接種したとのことだ。

このエピソードから学べることは2点ある。

1つは、HMOから予約の指示がきたという点である。対象者は60歳以上の人と、慢性疾患のある人、ということで、HMOが所属会員の健康情報を含むDBを管理しているから対象者の抽出が容易にできるのだ。

個人の通院歴、検査結果、処方薬等の情報は、すべてHMOのマイページに記録されている。このような医療情報のデジタル化、データベース化は、HMOが中心になって20年以上前から進めてきた。その結果、どの病院に行ってもDB上の自分のカルテを参照しながら医師の診療が受けられるようになり、医療に関する地域格差、質の格差が解消されてきたという。

昨今のニュースによれば、日本のワクチン接種では、まず自治体から郵便で申告用紙が送られ、それに既往症等を記入して持参する、と言われている。現地で対象者による自己申告をアナログ作業で確認することになりそうだ。われわれ日本人は、国民IDに対する(政治的)忌避感の歴史から、このようなデジタル化を推進できなかったことのツケに直面することになるだろう。

2つ目のポイントは、前述のとおりイスラエルでは病院やクリニックがHMO傘下で経営・運営されているという点だ。医師や医療関係者も各病院ではなくHMOとして雇用する、という仕組みになっているそうだ。

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