ちなみに2月2日火曜日の時点で重症者数は1094人、うち316人が人工呼吸器を付けているという。いずれにせよ、ワクチン接種の効果が最初に体系的に見られる国だけに、世界の注目が集まっていることは間違いない。
なぜこれだけのスピード対応が実現できるのか? 要因は2つあると言われている。
1つは被接種者の医療情報をワクチン供給元、ファイザー、に提供するという合意だ。製薬会社は治験を行ってはいるものの、その規模は限定的だ。100万人単位の事後データが手に入るのであれば、このような新規開発にとっては大変大きな支援になる。ファイザーとしても優先的にイスラエルに供給する意味がある。
後述するが、そのようなデータ取得が可能なのも、国民すべての医療データがデジタルデータとして管理されている、というインフラが整備されているがゆえだ。そのデジタルインフラを整備してきたのがHMOである。
2つ目は政治的な理由である。イスラエルでは3月末に、ここ2年で4回目の総選挙が予定されている。その事情には言及しないが、汚職疑惑に問われているネタニヤフ首相は、このワクチン接種を自らの指導力による成果として勝利につなげたいため、3月にはほとんどの国民が接種完了できるような計画にこだわったようだ(「ワクチン先進国イスラエルの実情」)。
HMO(Health Maintenance Organization)とは?
HMOとは法律で定められた医療サービスを提供する、非政府・非営利の組織である。日本の健康保険組合の機能に加えて、傘下に医療機関を運営し、その医師・医療スタッフを雇用しているのが特徴だ。Clalit、Maccabi、Meuhedet、Leumitという4つの組織があり、国民は各組織の提供するサービス内容の充実度や、自分の居住区の近くに医療機関があるかどうか、等を考慮しながら、どれか1つに加入することになる。
最大の組織はClalitで14の病院と1400のクリニックを運営しており、440万人の会員へサービスを提供している(ホームページから)。どのHMOでも、そのホームページから医師やクリニックを検索したり、オンラインでの予約が可能になっているだけではなく、24時間電話相談ができる窓口など、サービスの競争を行っている。法律で定められたパッケージに加えて、追加の費用負担により、より広いサービスを受けられる保険プランを提供するなど、工夫を凝らしている様子が伺える。
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