日本の大企業はなぜ「脱炭素」こうも嫌がるのか 脱炭素に積極的な企業と経団連の間にある溝

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同氏によると、2030年までに必要なのは、土地利用に関する法律を変え、耕作放棄地などを再生可能エネルギーに利用できるようにしたり、電力網を改良したり、再生可能エネルギーが確実に利用できるようにするための政策的行動だ。

こうした政策的変化がなくても、REIは電力需要が変わらなかった場合、再生可能エネルギーの発電量比率は2018年の17%から2030年には32%に増えると見ている。一方、政策見直しがあれば、これは39%に上る見通しだ。もっとも、2050年にカーボンニュートラルを目指すのであれば、さらなる技術的革命が必要だと大林氏は指摘する。

河野行革相は、土地利用と送電線アクセスの両方に関する規制改革を推進すると企業幹部に語っている。現行の法規制では、日本の地域電力会社10社は、送電線への優先的なアクセスを自社発電所に与えることができることになっている。

一方、小泉環境相は昨年12月にJCIの幹部と会談。その場で環境相は、消費者や企業の行動を変える最も効果的な方法と考えられている「カーボンプライシング(CP)」を支持するよう求めた。現在、日本の炭素税の実効税率は非常に低く、CO2排出量1トン当たりわずか3ドルである。これに対し、イギリスは22ドル、フランスは33ドル、スウェーデンに至っては126ドルにのぼる。

日本ではリコーがCPの採用に前向きな姿勢を見せているが、同様の取り組みをしている企業は少ない。REIの大林氏は、政府がCPの仕組みを導入すれば、企業はそれを受け入れるだろうと考えている。

メガバンク3行が決断したこと

企業の意識変化は、行動にも表れている。これまで日本のメガバンク3行は、世界で最も環境に悪影響を与える化石燃料である石炭を使った発電所への融資の3分の1を恒常的に提供してきた。

が、メガバンク3行は昨春、既存の発電所への融資はおそらく2050年まで続くが、新しい石炭プロジェクトへの融資は停止すると公表。丸紅や伊藤忠商事、三菱商事、双日などの商社も、炭鉱や新規石炭火力発電所への投資をやめる旨公表している。

東芝も石炭火力発電所の新規受注を停止。注目すべきは、積極的に排出削減に取り組む日本企業の株価が、それ以外の信頼できる排出削減策を持たない企業の株価を上回っていることである。

当然のことながら、JCI会員企業やその他炭素ゼロ社会実現に前向きな企業に対して、「性急すぎる」と牽制する強大な企業勢力も存在する。菅首相の所信表明から数週間のうちに、トヨタ自動車の豊田章男社長は、東京都が2030年代半ばまでにガソリン車の販売を禁止するかもしれないとの見方に憤慨してみせた。豊田社長は、夏の電力不足の問題や現在の自動車製造ビジネスモデルの「崩壊」を警告した。

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