物流施設、開発の裏で懸念される異様な過熱感 付加価値なしの「出口」ありき開発に危うさも

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賃料負担力のある優良テナントは、どの物流施設にも引っ張りだこだ。首都圏のある大型物流施設では、大手小売業者の入居が決まりかけていた。ところが、「近隣の物流施設が坪単価で数百円も安い賃料を提示し、奪われてしまった。聞けば、その物流施設は当初別のテナントの入居を進めていたが、さらに別の物流施設にテナントを奪われたため、われわれのテナントを引き抜きにかかったようだ」(関係者)。

すんでのところで逃した魚は大きく、新たなテナントが決まるまでに約1年を要した。需要が旺盛とはいえ、局所的にはテナントの奪い合いも起きており、当初描いた賃料や稼働を見込めないリスクがくすぶる。

経験の浅いデベロッパーの参入も容易に

一層の賃料引き上げには施設の差別化が欠かせない、と言うは易し。近年の物流施設は標準化が進み、各階にトラックが直接乗り付けられるランプウェイや階をまたいで荷物を移動させられる垂直搬送機、さらに従業員向けのカフェスペースといった福利厚生施設は当たり前。建物スペックも天井高5.5メートル、柱間隔10メートル、1平方メートルあたりの床荷重1.5トンなどの規格化によって開発ノウハウが蓄積され、経験のないデベロッパーでも参入が容易になっている。

プロロジスアーバン東京品川1の外観(記者撮影)

荷物の保管が物流施設の役割である限り、コスト圧縮が至上命題になりやすい。そこで各社は収益を生む場としての利用を提案する。物流施設デベロッパーで最大手のプロロジスは2020年7月、東京都品川区に老朽化した既存の倉庫を改装した「プロロジスアーバン東京品川1」を稼働させた。

ワンフロア1200坪と同社にしては小ぶりながら、東京23区内という好立地を活かしショールームや研究開発拠点など、荷物の保管以外の用途も訴求する。プロロジスの提携企業がテナントの荷物の入出庫を代行するなど、ほかの物流施設にはないサービスが強みだ。

「新木場の倍は賃料が取れる」と、担当者は胸を張る。東京湾岸に位置する新木場は、都心部への近さや高速道路アクセスのよさから商業界での「銀座」に例えられる一等地だ。物流施設としては異次元の金額だが、オフィスなど他用途としての利用を訴求することで、賃料相場の天井を突き抜けた。

ホテルや商業施設は言うに及ばず、オフィスもテレワークが向かい風。残された投資先として物流施設開発に名乗りを上げるデベロッパーは後を絶たない。各社は「巣ごもりでEC需要が伸びる」というストーリーを描くが、付加価値抜きに出口ありきの開発には危うさもはらむ。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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