物流施設、開発の裏で懸念される異様な過熱感 付加価値なしの「出口」ありき開発に危うさも
一方で、競争激化による過熱も指摘される。「悪い土地ではないが、当社では坪170万は出せない」。冒頭の取引について、同業他社はこう漏らす。物流用地の価格を左右するのは、都心部など大消費地までの距離と、幹線道路へのアクセスのよさだ。冒頭の相模工場跡地の場合、首都圏物流の大動脈である国道16号線に至近という強みがあるものの、「土地と国道の間をJR横浜線が分断しており、敷地までのトラックの取り回しが難しい」(同)。
同じく神奈川県内陸部に位置する愛川町ではこの2月、JFEエンジニアリングが所有していた工業団地をオリックス不動産が取得する。オリックス側はコメントを控えたが、JFEホールディングスは売却益として277億円を計上する予定だ。
用地費の高騰を反映してか、この数年賃料は右肩上がりで推移している。オフィスとは異なり一度に数千、数万坪単位で賃借される物流施設にとって、坪あたりほんの数百円の値上げであっても、総額へのインパクトは大きい。
大口顧客ありきの開発
上り調子の相場がデベロッパーの用地仕入れを強気にしている格好だが、「賃料引き上げにテナントがどこまでついて来られるか」と懸念する声も絶えない。背景にあるのは、アマゾンや楽天といった、賃料負担力が大きい大口顧客ありきでの開発だ。
荷物の配送を請け負う物流業者が出入りするイメージの強い物流施設だが、荷物の送り主である荷主が利用している物件も多い。荷主が展開する小売りやECは物流業よりも利益率が高く、高い賃料負担力がある。「彼らが提示する高水準の賃料が、相場を形成しつつある」(物流施設デベロッパー)。
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