「仕事がまるで続かない」私が見つけた苦悩の源 永田カビさんが赤裸々に自分を描く真意

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漫画のなかでは、読者に読んでもらう作品として成立させるために、自分のなかに起きた変化があれば、強調して描くようにしています。そうしないと漫画としておもしろくならないですから。でも、私生活では、「自分を変えよう」「変わらなきゃ」という気持ちはほとんどありません。「自分はヘンかもしれない」と思っていても、人にはそれぞれいろんな思考の歪みがあるはずです。それをムリに治したり、変えたりしなくてもいいと思いますよ。

――ありがとうございました。

(聞き手・編集、伊藤歩・茂手木涼岳)

取材後記「必死で生きている人に会いたくて」

私が永田カビさんにお話をお聞きしたいと思ったのは、永田さんの漫画に共感したからです。不登校を経験し、その後社会人になったものの、仕事での人間関係がツラく、行き詰まった私は、生きづらさを少しでもなくすために、「コミュニケーションのハウトゥー本」や「闘病エッセイ」などの本を手あたりしだい読んできました。

そんなとき、永田さんの『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』に出会い衝撃を受けました。とくに「自分には〇〇する資格がない」という言葉に強い共感を覚えました。

また、私のように劣等感を持ちながら生きることについて「ダメな自分でも受けいれて生きよう」というような指摘が多いように思います。しかし永田さんの本には「ダメもとでもあがいてから死んでやる」と描いてありました。自分を苦しめているものの正体はなんなのか。なんで自分はこんなに苦しいのか、それを突きとめてやる!という熱意を感じました

「あ、この人は必死で生きている」と思い、今回インタビューを申し込みました。

実際にお会いし、永田さんの言葉、とくに「社会から許されたい」という言葉に深く共感しました。読者のみなさんにも永田さんの言葉が届いてくだされば幸いです。

(伊藤歩・27歳)

永田カビ(ながた・かび)/漫画家。2016年『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)が単行本化。自身の内面と向き合う姿を赤裸々に描いたエッセイ漫画で注目されている。ほかに『現実逃避してたらボロボロになった話』(イースト・プレス、2019)など。新刊『迷走戦士・永田カビ』(双葉社)が本年2月18日に発売予定。

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