「仕事がまるで続かない」私が見つけた苦悩の源 永田カビさんが赤裸々に自分を描く真意
そんなふうにどん底まで追い詰められていた私でしたが、あるとき、「もういいや、自分のプライベートなことでも、あけすけに描こう」と、開きなおって漫画を描いて、ネットに投稿してみました。そしたら思いのほか反響をよび、単行本化されました。それがデビュー作『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』だったんです。
――漫画ではご自身の家庭環境やセクシャルな体験も含めて描かれています。自分の私生活を描くことで、まわりの目は気になりませんでしたか?
最初はネットに投稿するために描いていたこともあって、周囲の目はほとんど気になりませんでした。
ですが、漫画がヒットして単行本として出版されてから、親が周囲の目をすごく気にするようになったんです。ショックのあまり泣かれたり、「こんな本、恥ずかしくて親戚に見せられない」と言われたりしました。親に影響をおよぼすようになってはじめて、「私はとんでもないものを描いてしまったのか?」と疑問をもち、私も周囲の目を気にするようになりました。
親戚にはしばらくのあいだ、本のことは隠していました。「カビちゃんは今、なにをしているの?」と聞かれても、親はお茶をにごして、「漫画家」とは答えませんでした。とくに「祖父母には絶対見せられない」といちばん気をつけて隠していました。
でもある日、祖父母が購読している新聞に私のインタビューが載ってしまったんです。そのことをきっかけに、漫画のことを話してみました。そうしたら意外にも、「ああ、そうだったの」と、祖父母が親族のなかではいちばんケロっとしていましたね。
また、さいわい友だちは漫画のことを「がんばったね」「たいへんだったね」と好意的に受けとめてくれました。両親からの批判的な反応に苦しんでいるときに、こうやって肯定してくれる人がいたのは本当に救われました。
そしてなにより、想像以上にたくさんの人たちが私の漫画を読んでくれたことが、いちばんありがたかったです。何をしてもうまくいかなかった私が、勢いにまかせて自分のことを描いたら、自分でもびっくりするほどの反響があったんです。私にもできることをやっと見つけた気がしました。「私にできることはエッセイ漫画を描くことだ。これからも、それを続けるんだ!」と。
もうこわくない
もう開きなおってますから、どん底の状態を漫画にするのは、こわくはないです。気をつけているのは、住んでいるところがバレないようにしなきゃ、というくらいで、本当にあけすけに描くようにしています。私には、ほかに武器がないですから。