「仕事がまるで続かない」私が見つけた苦悩の源 永田カビさんが赤裸々に自分を描く真意
そうやって描いた漫画を、たくさんの人が読んでくれる。すると、なんとか社会に居場所を得られたような感覚になれます。なにもできなかった状態のころよりも、自分のことを肯定できるようになってきたと思います。
だから今でも漫画を描くことに必死でしがみついています。もちろん必死なのでしんどいこともたくさんあります。でも社会に居場所を得られたことは、私としては大きな出来事でした。
――漫画はヒットしましたが、まだ「生きるのに必死」という状態は残っているんですね。
はい。生きにくいですね。どれだけがんばっても、世間から高評価をもらっても、どこかで社会から許されていないような気がします。漫画の原稿ができあがったときには、達成感を感じます。でも、「エッセイ漫画家」という社会のなかでの私の居場所を保ち続けるために、「次もがんばらないと」と思ってしまう。「いったい、どこまでがんばれば、どこまでやれば私は許されるんだろう」と思いながら漫画を描いています。
本当は、社会はともかく、自分で自分を許してしまえばいいんだと思うんですが、それもなかなかできないんです。どうしても自分の評価を他人にゆだねてしまうんですよね。いつか、信頼できる人が「君はもうじゅうぶんがんばったよ」と言ってくれたら、とずっと思っているんですけれど、なかなかそんな人は現れないですね。
また、漫画以外のことは、あいかわらず何やってもダメです。そんな自分に失望することもあります。でも、ダメダメな私の生活を、漫画にしてしまえばいい。漫画というワンクッションを置くことで、なんとかダメな自分を受けいれることができています。
自分の特性 治さなくても
――私も「自分の存在を許してほしい」というか、「誰からも愛されたい」という気持ちがあります。こんな気持ちは変えなくてはいけないのでしょうか。
べつに変えなくてもいいんじゃないですか。私は今、精神疾患や摂食障害、発達障害を抱えています。でも今はそれを治そうとは思っていなくて「べつにいいや」と思っています。
多くの人が「病気は治さなきゃ」とか「それは治療の対象だ」と思うようなことでも、本人が「べつに私はこのままでいいや」と思えば、それでいいんじゃないか、と。