騙されやすい人は「相関と因果」をわかってない 科学的思考を身につけることの重要な意義

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例えば、新型コロナウイルスで世間が大騒ぎになったとき、テレビなどでは「どうしたら安全ですか」「感染者数が何人まで減れば安心できますか」と専門家に聞く場面がありました。少し前だと、福島第一原子力発電所の事故のときに、放射線量がどの程度になれば安全かとしきりに報道されていました。

科学は真理に到達できない以上、残念ながら、こうした問いには「絶対に正しい」答えは存在しません。「この仮説に基づけば、こういうことがいえます」としかいいようがないからです。そうした前提もなく、断言する「専門家」は怪しいと判断します。

とくに、新型コロナウイルスのように、ウイルスの感染拡大が速すぎて科学が追いつけていないものは「真理に近い仮説」もまだないので、残念ながら科学的な人ほど断言はできません。科学は、仮説を出しては潰し、出しては潰し、いかに「真理に近づけていくか」、というものです。新型コロナウイルスに対しては、仮説を出しては潰す、検証する時間がまったく足りません。

新型コロナウイルスは、いろいろな説が世の中に出回っていますがこれらは仮説で、これからすべてしっかり検証すべきものです。検証の時間がまだありません。しかし、待ったなしの状況では、不完全な仮説でも使うという場合もありえます。ただそのときには、検証が不十分な仮説であるということはしっかり認識していないといけません。

みなさんからすれば、遅いと感じるかもしれませんが、科学の世界に身を置く人間からすれば、今回の新型コロナウイルスは、ものすごいスピードで研究がされています。

ワクチン開発には、10年かかることはざらです。ワクチンは大勢の人に接種するので、副作用があると大変なことになるので、通常、大変な量の実験が必要だからです。しかし、新型コロナウイルスについては異例の速さです。

ウイルスの感染拡大と同時並行ですからデータもそろっていないため、今は、どれほどすごい専門家であっても、不完全な仮説しか出せません。皆さんが今目にしているのは、仮説が磨かれる途中の段階です。それでもいろいろな人が仮説を出すことで、データが増え、よりよい仮説になっていきます。

このプロセスはぜひ頭の中に入れておいてください。こうしたプロセスを知っていれば、新型コロナウイルスのような未知のウイルスが今後現れても、デマに振り回されるということはないはずです。

最強ツール「相関」と「因果」

覚えておくと便利な考え方があります。それは、「相関」と「因果」です。相関関係と因果関係というこの2つの言葉は、科学の基本です。

相関というのは、目に見える関係です。研究の観察結果でもあります。例えば、「暗い部屋に入ってスイッチを押したら電気がつく」という事象があったとして、これは相関関係です。

次ページ相関関係とは「原因と結果ではないかもしれない」関係
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