ロケで事故「芸能人の労働環境」は改善できるか フリーランスへの補償が広がる可能性は?
第2の注意点は、保険料を芸能人自らが負担しなければならないということです。一般の労働者の場合には、労災保険の保険料は100%事業主が負担しており、給与からの天引きはありません。しかし、特別加入の労災保険料は本人負担であるため、芸能人が自らの収入の中から負担する必要があります。
収入が少ない駆け出し期などは、金銭的負担を懸念して加入しない人がでてきそうなため、事務所が配慮をして、保険料相当分を報酬に上乗せしたり、事務所側で福利厚生的に保険料を肩代わりするという対応も考えられるでしょう。
なお、労災保険の保険料率は決して高くはないので(年収の0.3%程度)、費用対効果を踏まえ、ぜひとも積極的に加入をしておきたいものです。
労災保険の「受け皿」は明確になってない
第3は、現時点で芸能人の労災保険の「受け皿」が明確になっていないということです。芸能人を含め、一人親方として働く方が労災保険に特別加入をするためには、「特別加入団体」という中間団体を経由して政府への加入手続きを行う必要があります。
今回の芸能人の労災保険の加入には、日本俳優連合が特別加入団体としての役割を果たすことになりそうです。
【2021年2月19日10時30分追記】初出時、一部事実関係に不正確な部分がありましたので、上記のように修正しました。
しかし、芸能人は俳優だけではなく、歌手、お笑い芸人、アイドル、MCなど、多種多様です。俳優以外の芸能人が、実際にどこを窓口にして、どのようなルートで労災保険に特別加入できるようにするのかを明確にし、業界内で周知していくことが必要になるでしょう。
芸能人に労災保険が適用されることにより、芸能界の労働環境が大きく改善されることが期待されます。しかし、自ら加入手続きを取らなければならないなど、一般労働者と異なる注意点もあります。
芸能人である本人はもちろん、芸能プロダクションやマネージャーなど、関係者も、労災保険法の手続を把握し、漏れのないよう対応を進める必要があります。
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