ロケで事故「芸能人の労働環境」は改善できるか

フリーランスへの補償が広がる可能性は?

保険適用でどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?(写真:gnepphoto /PIXTA)

2021年4月から、柔道整復師、アニメーターと並び、芸能人にも労災保険が適用されるという労災保険法の改正が行われました。

芸能人は、バンジージャンプなど、番組内での過酷なロケなどで負傷するケースも少なくありません。労災保険に加入をしていると、労災による傷病が発生した際、以下のような多様な補償を受けることができます。

①療養補償(3割負担なく、無料で治療が受けられる)
②休業補償(職場復帰できるまで、日数無制限で所得補償が受けられる)
③傷害補償(労災により障害が残った場合、程度に応じ年金や一時金が受けられる)
④遺族補償(労災により死亡した場合、遺族に対して年金や一時金が支給される)
⑤介護保障(労災により介護が必要になった場合、介護費用の給付が受けられる)

芸能人は個人事業主であり、労災保険は原則として適用されないというのがこれまでの考え方でした。しかし、実態としては労働者に近い立場で活動をしている芸能人も多く、芸能人がケガや病気をした際のセーフティーネットの整備が求められていました。

今回の労災保険法の改正により、そのセーフティーネットが導入されることとなったわけですが、本稿では、芸能人が労災保険に加入することで得られるメリットと、加入時の注意点について説明します。

芸能人が労災保険に入るメリット

まず、芸能人にとって、今回の法改正後のスキームにより労災保険に加入することによって得られるメリットは3つあります。

第1のメリットは、これが最大のメリットですが、労災認定を受ける際、「労働者性」を巡る折衝が不要になるということです。

厳密に言えば、実は、法改正以前も芸能人に対して労災保険がまったく適用されないわけではありませんでした。例えば、格闘技系のイベントのリハーサル中に負傷したアクション俳優に労災保険が認められた事例があります。

しかし、厚生労働省の通達により、以下の4つの条件のうち、いずれか1つを満たさない場合に限り「労働者性」が認められ、芸能人にも労働者として労災保険が適用されるとされており、依然としてその門戸は非常に狭められていました。

①契約形態が雇用契約でない
②報酬が稼働時間に応じて定められていない
③当人の提供する歌唱、演技などが基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっている
④リハーサル、出演時間などスケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクションなどとの関係では時間的に拘束されていない

ただし現実は、芸能人にとって、①~④はいずれも当てはまるのが通常です。

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