すなわち「2008年憲法」下で国軍の特権は守られており、総選挙で負けたからといってすぐに国軍の国政関与が脅かされたり、国軍の自律性が失われたりするわけではない。にもかかわらず、ミャンマー経済にとっても国軍にとってもコストの高いクーデターを実施したのには、国軍の意思決定メカニズムが関わっているとみる。
ミンアウンフライン最高司令官はじめ主流派を占める多くの国軍幹部は保守的だ。23年間におよぶ軍政時代、かつてのタンシュエ国家平和発展評議会(SPDC)議長をはじめとする国軍主流派は、スーチー氏とNLDを徹底的に弾圧してきた。こうした主流派をおさえて、2011年に改革を進めたのはテインセイン元大統領だった。当時、軍政序列3位だったシュエマン元連邦議会議長も、自身が次期大統領を目指すという野心もあってスーチー氏に協力した。しかし、彼らは2016年のスーチー政権の発足とともに、表舞台から去ってしまった。
――とはいえ、国民はアウンサンスーチー氏を高く支持し、人気は衰えていないようです。
確かにそうだ。国民の人気はとても高いが、同時に国軍の影響力はあなどれない。ミャンマーの人たちはそういう現実を十分に理解している。そのため、国民はアウンサンスーチー氏やNLDと国軍は決定的な対立を避けて、双方が協力する方策を模索しつつ、国民生活の向上へつながる改革を続けてほしいと願ってきた。これが国民の現実的な本音だ。
――その協力関係がうまくいっておらず、クーデターにつながったということでしょうか。
お世辞にもうまくいっていなかった。スーチー氏とミンアウンフライン最高司令官を仲介する人がいなくなるなかで、2人の関係は冷え切ってしまった。2人の間で対話も交渉もないことが、今回のクーデターにつながった。
国軍は用意周到にクーデターを用意していたのだろう。すぐさまNLD系の議員や閣僚を一網打尽にし、無血でクーデターを成功させたことをみてもそれがわかる。スーチー氏やNLDはもう少し警戒すべきであった。
高齢のスーチー氏、NLDの人材不足
――国家非常事態宣言は1年を期限とし、その後総選挙を実施すると発表しています。アウンサンスーチー氏やNLDは再起できるでしょうか。
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