日本郵政の労働組合が抱く強烈な危機感の裏側 JP労組が会社に異例申し入れ、幹部2名を直撃

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――かんぽ問題の処分をめぐる社員の不信感の高まりに対して、今後の会社への先行きに与える影響として相当な危機感を持っているようですね。

栗田:当然ながら喫緊の課題だが、JP労組はかんぽ問題だけではなくグループ全体を見ている。かんぽ問題、(非正規社員にも正規社員同様の各種手当を認めた)労働法20条裁判、(土曜日配達をやめる)郵便法改正などいろいろなものがある。すべてに対して緊張感を持ってやっている。

かんぽは不正で調査を受けている渉外社員にとって大変な問題だが、窓口社員や、処分対象になっていない渉外社員の組合員の中からは違った意見も聞こえてきている。そもそも事業全体を見ても、今回の問題による信頼失墜やコロナ禍の打撃もあるが、金融市場の低金利や、郵便部数の減少傾向などコアビジネスすべてが厳しい状況にある。

われわれの第一の使命は雇用確保と労働条件の維持向上だが、このまま会社任せにしていたら、かんぽ問題だけでなく非常に難しい事業環境になる。郵政グループをいかに持続させていくか、その中での課題がたくさんある。

グループ全体の信頼を回復し組合員の雇用を守る

――JP労組としては、これまでの労使協調路線は保ちつつも、これからは会社に対して言うべきことを言っていく、ということですか。

栗田:これからも会社が重要なパートナーという位置づけは変わらない。われわれとしては、渉外社員を守ることも当然大事だが、グループ全体の社内外の信頼を回復し、その中で事業の持続性を守っていくことを目指している。そうすることで組合員の雇用を守っていこうとしているのだ。

**(記者より)**
発言における論理の一貫性や整合性の高さはさすが日本最大の労働組合の幹部といったところだろうか。ただ、平場の組合員に労組の考え方がどうも浸透していない点は、現場の社員に経営理念や経営哲学がさっぱり伝わらない日本郵政グループの経営陣と五十歩百歩という印象が拭えない。どちらも、「巨大組織だから」で済まされることではないように思われる。
『週刊東洋経済』2月13日号(2月8日発売)の特集は「郵政崩壊」です。
山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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