日本郵政の労働組合が抱く強烈な危機感の裏側 JP労組が会社に異例申し入れ、幹部2名を直撃
――JP組合としてできることは、調査の整合性、適切性に目を光らせていくということですか。とくに今の調査で問題視したり、懸念したりしている部分はどこですか。
坂根 元彦(以下、坂根):そもそも本来の特定事案調査というのは、お客様の声を聞き、かつ、募集人に受理の状況を聞いていた。そのうえで、法律に沿った説明をしていなければ、募集人に対して月額給与を超える額の返還請求が、ある月にあってもやむをえない。
だが、今の調査で言われているのは、(渉外社員にとって)お客様がどう言っているのかもわからない(状況での契約の無効化・募集手当の返納請求)というようなものだ。一連の問題の中で、お客様の話のみに基づく契約の合意解除は、会社がお客様の不利益解消を優先したのでこういう形になっている。だが、募集人への状況調査が十分にできていなかった。
そこはやはり問題だ。やるべきことを飛ばして「不正認定だ、合意解除だ」とやってきているので、現場は返納請求に納得がいっていない。(返納請求が)いったいどの契約に対してなのかも(渉外社員に)わからないような状態になってもいる。
組合員としては、返納請求について理解できる部分については「お金はお返しします」という部分があっても、調査があまりにも乱暴すぎるのではないかという不満の声は当然ある。われわれも会社にきちんとした説明を求めていかないといけない。
日本郵便はかんぽの販売代理店なので、契約解除については調査ができない。直接はかんぽ生命が調査している。だから日本郵便の現場の管理者も、不適正募集とされて返納請求された人に処分の理由や調査の中身の説明ができない。そこを丁寧にやらないと、会社への現場社員の信頼回復はできない。
退職勧奨は会社にとって都合がよくないか?
――日本郵便では50歳以上の渉外社員を対象に退職勧奨をしています。その中身が特殊です。辞めるときにいったん自己都合退職扱いとし、その後の調査結果で問題がなければ割り増部分を払うことになっています。
調査で重大な問題が発覚すれば、割り増部分がもらえないばかりか、退職金全額を返還することになっています。これらに合意することが応募条件です。他社では聞いたことがないような、会社にとって都合のよい内容だと思うのですが。
栗田:この制度で退職した場合、調査結果次第では後から返せと言われる可能性があるというのは、現実問題として仕方がない部分はある。ただし、調査のスピードがそもそも遅すぎるのではないか。この制度を使って退職してもいいものかどうか、社員の判断も遅れてしまう。そこは問題だ。