日本郵政の労働組合が抱く強烈な危機感の裏側 JP労組が会社に異例申し入れ、幹部2名を直撃

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――渉外社員を不適正募集に追い込んだ上司が残ってしまうと、現場としてはしこりや、もっといえば恨みが残る。会社との信頼関係は当然なくなる。

栗田:上司の処分というところまで持っていくには、報酬を含む処遇に影響する大きな判断になるので、判断は厳密にならざるをえない。そうなると、やはり証拠がないと難しいとなりがちだ。

だが、処分まではいかなくとも、せめて配置転換で対応することはできるはずだ。例えばそういう話がある上司や管理職は営業の現場に携わらないようなところに異動させ、万が一にでも今までのような間違った営業指導を繰り返させないようにするのも1つの有効な手段だと思う。ただし、それも会社の人事権の範疇であって、なかなかわれわれの思うとおりにはいかない。

重い腰を上げた理由

――かんぽ不正問題が発覚してから1年半近く経ってからようやく会社へ申し入れたというのは、どうしてなのでしょうか。

栗田:正直なところ、とくに時期的な意図があったということはない。これまで問題が発生してから優先順位をつけて対処を進めてきた。例えば、会社は問題を受けて新たな契約をストップしてきたので、渉外社員は新たな営業手当を得られなくなっている。

もともと渉外社員は、基本給が窓口業務の人よりも低く設定されていた。営業手当があっての十分な給与水準ということになっていたので、そうなると(営業自粛で)生活が厳しくなる。JP労組としては、まずはその問題についてしっかり会社と交渉しなければならなかった。

あとは再発防止として、お客様第一の視点から商品的な問題の部分や研修のあり方などについて会社と議論、交渉を進めてきた。そして、いざ昨年10月から営業再開を目指すにあたって、処分をめぐる今の不信感が残ったままではとても厳しいだろうということで、会社に申し入れるに至った。その時期、その時期に合わせたタイミングで動いてきた。

――社員の生活が厳しいという点ですが、営業自粛が続いて渉外社員の身入りが厳しい中で、さらにかんぽの判断で無効契約にした分についても、これまで支払った営業手当の返納を渉外社員に求めてきました。昨年8月以降はいったん返還請求を止めていますが、会社が請求再開に向けて書面による調査を始めました。これについてはどう考えますか。

栗田:不適切な営業によって、お客様にご迷惑をおかけして獲得した契約に付随した手当については、社員は返納請求を受け止めなければならない。ただ、その返納請求が、募集人(渉外社員)に対して正しい調査をしたうえでのものなのかどうかがいちばんの問題点だ。調査の結果、契約の無効化に整合性があるものであれば、返納請求の再開は受け止めざるをえないと思っている。

その中で、募集人が適切な営業をしていたのにもかかわらず一律に営業手当の返納を求められているということであれば、JP労組としては「そこは返納対象ではないはずだ」と指摘していかないといけない。

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