日本郵政の労働組合が抱く強烈な危機感の裏側 JP労組が会社に異例申し入れ、幹部2名を直撃
――JP労組は2020年12月11日、会社に対して処分の適正化や透明化を求める申し入れを行っています。
栗田:処分自体は会社の専権事項なので、JP労組との交渉によって方向性を整理する対象にはならない。だが、JP労組としては会社が一定の基準を社員に示し、そのもとで処分を進めるべきだと考えている。そういう部分で、きちんとやってほしいと申し入れをした。
上司の処分については、配置転換で厳しく対応をするべきだ。今のままでは会社に対する社員の信頼回復はない。働く社員、組合員が会社への信頼をなくしているままでは、これからの再生はできないと危機感を強く持っている。
――現場の渉外社員の調査や処分の適切さ、公平性について不満が出ている部分ですが、これまでJP労組としては、会社とどのような話をしてきたのでしょうか。
栗田:会社のほうでも、かんぽ生命の調査に基づき弁護士とも相談しながら渉外社員の処分を決めるという手順は踏んでいる。その部分については会社と交渉することはできないし、われわれにはそもそも、お客様のところに行って、不適切な営業の話が事実なのかどうかを確かめる権限もない。なので、対応は難しいところがある。
ただし、処分の量刑、裁定に関しては苦情処理という制度を取っていて、そこで声が寄せられたものは、行為などと処分の整合性があるのかどうかについて、JP労組の持っているスキームを使って、やれるところまでチェックしていくしかない。
どこまで行っても証拠にグレーな部分は多い
――幹部などへの厳しい処分を求めています。会社も調査結果として問題があれば幹部の処分を適切に進めると言っていますが、どう感じていますか。
栗田:重要な問題だが、非常に難しい。渉外社員の調査については、契約の内容や状況などある程度事実に基づいて進めることができる。だが、上司、管理者が問題のある指導を本当にしたのかどうか、という部分については正直なところ、どこまで行っても証拠にグレーな部分は多い。
文書に残っている指示や指導も、「犯罪をしてまで契約を取れ」という内容だと断定的に読めるものなのかといえば、そうとは言い切れない。また、口頭で「言った」「言わない」という食い違いの部分については、なかなか証明できない。こうした理由から、誰を処分すべきだという点について、会社とのやり取りは難しい。
それでも現実として、組合員からそうした指摘や声が上がっているのであれば、会社も組合員の話を基にしてパワハラ的な指導があったのかどうか、できる限りの調査をするべきだ。JP労組としては今後も成り行きを注視し、しかるべき申し入れをし続けるしかないと思っている。