「日本初の女性首相」の物語がいま支持される訳 『総理の夫』筆者の原田マハ氏に聞く

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「立場が逆転し、女性がリーダーになっても、役割分担をきちんと果たす理想的な夫婦像として、主役夫婦を描きました。

凛子は、私が希望する理想の総理大臣です。官僚が作った原稿を棒読みするのではなく、自分の言葉で語りかける人。政治学者だった母の教えを受け、つねに弱者目線で誠実です。完全無欠なキャラクターに見えますが、早くに両親を亡くして痛みを知っている。途中、思いがけないことが起こり彼女は悩みますが、独りで抱え込まないで周りにちゃんと相談します。

日和を書くのは面白かったです。浮世離れしていて、マンガっぽくおかしな立ち回りを演じることもありますが、徹底的に凛子を支える。必死過ぎて、凛子にウザがられるときもありますが、そういうところは普通の夫婦と同じです。日記を書きながら、読む人が生きる未来が明るいものであればいいなと願っている。凛子が1日1日を闘う姿を忘れたくない、届けておきたいと思いながら書いているところもあり、いい夫だなと思います」

脇を固めるキャラクターで、印象的なのが日和の母、崇子と、凛子を総理大臣に仕立てた原久郎だ。彼らは時に凛子たちと、利害が対立する。しかし、最終的には「自分の利権や人脈を、自分たちの既得権益だけのためではなく、国民のため、世の中のために使おうとする。そうなってほしいと思って描きました」と原田氏。

世界に対して日本は遅れている

小説が上梓されてから7年半。現実世界が追いついてきた。その点について原田氏は、次のように話す。

「アメリカでは、カマラ・ハリスが副大統領になり、女性で黒人でアジア系だけど副大統領になるのは最初、だけど最後ではないという演説をして、非常に感動しました。ドイツのメルケル首相も辣腕を振るう女性。ニュージーランドのアーダーン首相は2017年の就任数カ月後に妊娠して、国のトップとして世界で初めて産休を取得しました。コロナ対応ではいち早く動き、国内感染をほぼ100%食い止めています。台湾のオードリー・タン・デジタル担当政務委員は、素早く立ち回りコロナの感染拡大を抑え込みましたが、自らがトランスジェンダーであることを公表しています

世界には、ジェンダーに関係なく、非常に優れた政治家がどんどん生まれている。対して、日本がどのぐらい立ち遅れているのかを思い知りました」

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