総合商社、コロナ禍の病院経営で問われる底力 アジア等で展開、感染管理や高度治療で差別化

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だが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が各社の病院ビジネスの前に立ちはだかっている。

双日のイキテリ病院や豊田通商のサクラ病院は目下、コロナの患者対応にあたっている。サクラ病院ではインドのロックダウンの影響で外来患者が一時5分の1に減った。ただ、サクラ病院に共同出資するセコムグループと豊田通商が防護服を調達。感染エリアとそうでないエリアを明確に区分けし、従来の治療とコロナ対応を両立させている。

一方、がんなどの高度先進治療を強みにしていたIHHは、検査や手術を目的に訪れる外国人向けの医療ツーリズムを収益柱の1つと考えていた。だが、コロナ禍で国境を越えた往来が制限されたことで医療ツーリズムが大きく落ち込み、代わって国内のコロナ患者への対応に追われる事態となった。

コロナでオンライン診断サービスも

IHHはこれまでに、シンガポールやインド、トルコで累計3万人のコロナ患者を受け入れたほか、PCR検査も行っている。具体的な対応は病院ごとで異なるが、院内感染防止を徹底したうえで患者を受け入れている。また、コロナ感染対策のため、オンライン診断サービス(遠隔診療)を8カ国・地域で導入し、自宅にいながら診察を受けることができる体制も整えた。

感染管理を徹底し、新型コロナ患者のケアにあたるサクラ病院のスタッフ(写真:豊田通商)

IHHは2011年の三井物産の出資から10年を経て、現在の病院数は80病院に拡大した。それとともに、EBITDAも2019年12月期には4倍弱の8億ドル(844億円)まで成長した。

コロナの影響も回復基調にあり、2020年4~6月期を底に「シンガポール、マレーシア、トルコを中心に国内患者が戻りつつある」(三井物産)という。コロナ向けPCR検査の実施と同時にコスト管理を強化しており、コロナという想定外の事態にあっても収益基盤は堅調だ。

一時はコロナ対応に追われた各病院の経営も、徐々に平静さを取り戻しつつある。収束時期が見通せない中、薬局や専門クリニックなどの周辺事業を含め、コロナ後の取り組みが問われている。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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