菅内閣でついに動き出す「炭素の価格付け」論議 焦点の1つは炭素税、求められる税制グリーン化

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では、そのような政策はありうるのか。当然ながら、唯一の特効薬のような政策はなく、さまざまな政策の合わせ技となる。その1つになりうるのが、エネルギー諸税についてCO2排出量比例の課税を拡大することと同時に、その税収を脱炭素化を早期に実現するための設備投資や技術革新に用いることである。

わが国で炭素税といえる税は、地球温暖化対策のための税(温対税)である。ただ、温対税の税率はCO2・1トン当たり289円で、主な炭素税導入国の中では低い水準にある。温対税以外に石油石炭税や揮発油税などのエネルギー諸税があって、これらの課税を炭素排出量換算すると、CO2・1トン当たり約4000円になると経済産業省は試算している。

早期の「税制のグリーン化」実現を

しかし、エネルギー諸税はCO2排出量に比例していない。その背景には、製鉄プロセスで石炭が必要な鉄鋼業や石炭火力発電に依存する電力業、さらには灯油を多用する寒冷地住民への配慮がある。

とはいえ、脱炭素を早期に目指すならば、税制でそうした配慮をいつまでも続けるわけにはいかない。むしろ、税制ではCO2排出量比例の課税を拡大(税制のグリーン化)しつつ、その税収を使って、そうした配慮なしで雇用や生活が成り立つような技術革新や製品開発を促すという政策転換が求められる。早期に脱炭素化が進められるような技術革新の促進や産業振興を行うことで、成長戦略にも資する。

税制のグリーン化を本格的に進めるには、温対税の単純な拡大だけでは不十分で、エネルギー諸税の抜本的な改革も必要だろう。ただ、いきなり過重な負担増を課すわけにはいかない。まずは緩やかに、かつ遅滞なく温対税を拡大する方法もありえよう。

税収を脱炭素化の促進に用いるのはよいとしても、長期にわたり漫然と補助し続けるような支出であってはならない。日本は2050年のカーボンニュートラル実現とともに、温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比でマイナス26%とする目標を掲げている。

2050年までにカーボンニュートラルを実現できればよいわけではない。2030年まであと9年しかなく、脱炭素化の促進を財政的に支援するとしても早期にその成果を求めなければならない。

もちろん、新型コロナウイルス対策が目下の最優先課題である。しかし、その収束後には、遅滞なく政策が講じられるようにスタンバイ状態にしておく必要がある。新型コロナが収束していない段階でも、EUにはカーボンプライシングの強化を断行した国があることを看過してはいけない。

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