大きな"インパクト"こそベンチャーの使命 ラクスル・松本恭攝CEOと語る(上)

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2ケタ増資も「プレッシャーは感じていません」

――松本さんのこれからに期待することは。

伊佐山:僕が松本さんに期待することは、「小さくまとまってほしくない」ということ。ベンチャーのよさは、大企業でできないこと、大企業ではできない大胆な意思決定を、スピードと限られたリソースですることです。だから、いろいろな投資家もいるし、いろいろなプレッシャーがあると思うのですが、あまりロジカルで合理的なつまらない計画を追及するようになってほしくありません。

ベンチャーなので、たとえば赤字が続くと、目先の黒字化できそうなビジネスに手を出しがちです。ただ一度、そういう体質になると絶対に大きな会社にならない。クセがついてしまって、大胆な発想ができなくなってしまう。一度クセがつくと、変えるのは本当に大変です。

だから、組織のトップである松本さんが、つねに先を見て、大きなビジネスモデルを作ること。10回に1回、大きく当てればいいというセンスで、トライしてほしい。そしてダメならすぐに潔く撤退して、「ダメでした。すみません」とすぐにピボットできるような経営者でい続けてほしいですね。

僕らが出す資金は、何が何でも100倍にして返してほしいというわけではありません(笑)。リスクキャピタルです。絶対に儲かる話がないことをわかって投資しています。だから、大きな増資をしたからと、投資家に気を遣って“小さな行動”はしてほしくない。

最近、ラクスルのような2ケタ億円の大型増資は増えたものの、日本では珍しい事例です。松本さんは、そのプレッシャーを感じているはずなので、ストレスに感じて無難な計画の数字を出すよりは、もっと先を見てほしいと思います。

われわれはそのために応援しているわけですし、計画どおりにいかないからと細かいことで理詰めするつもりもない。だからこそ、今持っている高い志と、どうやってこのビジネスを大きくするかという目線は、変えないでほしいですね。

――今、お話に出ましたが、プレッシャーは感じていらっしゃいますか。

松本:「いかに大きな事業にして世の中にインパクトを出すか」に、今、フォーカスをしているので、プレッシャーはそんなに感じていません。ただ、預かった“おカネ”をいかに大きくしていくかということのプレッシャーはあります。少なくとも伊佐山さんはヒットを望んで投資いただいたわけではなく、満塁ホームランを期待している。先ほどの「志」の話ではありませんが、天井の低い事業の作り方をしないようにと。

あとは、「時間」に対するプレッシャーはかなりあります。今は、おカネを失うことよりも、時間を失うことのほうが大きな損失だと思っています。これだけ出資いただいたということは、時間をおカネで買って早く成長しろということ。100年かけて成功させるのではなく、2~3年でやりきる。いかに早く世の中にインパクトをもって変えていくか――。以前にも増して、のんびり事業をしていてはダメだと思っています。

(構成:山本智之、撮影:梅谷 秀司)

伊佐山 元 WiL 共同創業者CEO

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いさやま げん / Gen Isayama

1973年2月、東京都生まれ。97年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)に入行し、2001年よりスタンフォード大学ビジネススクールに留学。2003年より、米大手ベンチャーキャピタルのDCM本社パートナーとして、シリコンバレーで勤務。

2013年夏より、シリコンバレー在住のまま、日本の起業家、海外ベンチャーの日本進出を支援することで、新しいイノベーションのあり方やベンチャー育成の仕組みを提供する組織を創業中。日本が起業大国になることを夢見ている。著書に『シリコンバレー流世界最先端の働き方』(KADOKAWA中経出版)がある。

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