タクシー業界の破壊者ひっそりと日本上陸 ドライバーを持たない異色の配車サービスとは?

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カラニックCEOは「Wiiのテニスゲームで世界2位のスコアを獲得したこともある」と自己紹介(写真:The New York Times/アフロ)

米国サンフランシスコで生まれ、世界20カ国以上で展開している会員制の配車サービス「Uber(ウーバー)」が、11月中旬から東京で試験運用を始めた。

ウーバーを利用するためには、まずスマートフォン(スマホ)に専用アプリをダウンロードし、クレジットカード番号を登録する。後は、アプリからワンタップで車両を呼び出すことが可能だ。行き先の指定や決済、ドライバーへの評価付けなどがすべてスマホのアプリで完結する。

ユニークな点は自社でドライバーを抱えているわけではないこと。米国ではタクシー運転手に加え、自動車を持つ一般人もドライバーとして登録している。ウーバーはこうしたドライバーと乗客を結び付けて手数料を得るマッチングサイトであり、「ドライバーのクラウド(群衆)ソーシング」といえる。

創業者であるトラビス・カラニックCEOは2009年のサービス開始以来、米国のタクシー会社や規制当局などと衝突しながら、合法化を勝ち取ってきた。統一されたインターフェースによる世界展開にも積極的で、ホームページには東京を含む21カ国59都市が掲載されている。アジアではすでに上海、ソウル、台北など7都市でサービスを始めており、東京は8都市目だ。

試験運用を行う地域は当初、六本木・元麻布の一帯。基本料金100円、毎分65円、移動1キロメートルごとに300円という料金設定だ(最低料金800円)。試験運用にはトヨタの「クラウンGRS200」などの高級車が使われており、成田空港と東京23区を定額4万円で移動できるサービスもある。

試験運用ではウーバー日本法人が旅行業登録を行うことで自らハイヤーを運行している。しかし、本格展開にはタクシー会社との広範な連携が不可欠。すでに一部の会社との交渉が進んでいるようだ。

多くのスタートアップに出資してきたモビーダジャパンの孫泰蔵社長はウーバーを「これまでの常識を破壊するスタートアップの1社」と絶賛する。ウーバーが8月にベンチャーキャピタルから資金調達を行った際の企業価値は年商規模の30倍に相当する35億ドルと算定された。静かな上陸だが、日本のタクシー業界も揺さぶられることになるかもしれない。

(週刊東洋経済2013年11月25日発売号)

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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