BMWアルピナB3「1229万円」の価値は一体何か 希少だから値引きはほぼなし、中古価格も高い

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オーナーの満足価値も高い(写真:ニコルオートモビルズ合同会社)

ふたつめの理由は、需給バランスの違いから、一般のBMWとはビジネスのスキームが大きく異なることだ。アルピナの場合、需要に比べ生産数が少なく、顧客も注文から納車まで半年かかるのが当然と考えている。ということは、いわゆる「吊るし」のクルマをバックヤードに抱えておく必要がなく、値引きもしなくていいことに結びつく。

これに対し、一般のBMWは他の輸入車と同様、あらかじめ多くの注文が期待できるオプションの組み合わせやボディカラーを選んだ車両を多数本国に“見込み発注”し、ディーラーに来た購買客はそのリストの中から自分の好みに近いものを選ぶことが一般的になっている。ゼロからオプションリストに○をつけて注文するのも不可能ではないが、たとえば生産拠点がヨーロッパの場合、日本まで船便で届けるのに2カ月かかり、その間ずっと待っているのは多くの場合現実的ではない。

もしも見込み発注車から余剰在庫が出た場合、ディーラーは値引きして売り切るか自社登録して中古車として販売するかを迫られる。というより、値引きゼロでもお客さんが在庫車に食いついてくれるのは新型発表直後の一時期だけだ。ということはケースによっては一般のBMWなら定価より安く手に入るチャンスが多いのに対し、アルピナは安くなりにくいというわけだ。

「アルピナなら10年ローンも組めますよ」

新車で安くなりにくく納期も長め、さらにカスタマイズされる機会も多いアルピナは、ユーザーの所有車に対する忠誠心も高いので、中古車が出てくる機会も稀である。それゆえ、中古車相場は伝統的に高止まりしていて手頃なクルマを探すのは難しい。

走行距離にもよるが、今年1月下旬に中古車情報サイトで探してみたら10年落ちのBMWアルピナB3に400万円近い値が付いていた。20年落ちのBMWアルピナB3でも200万円近い価格で売られているモデルを発見できた。

新車の残存価値の高さを示すひとつの例は、筆者自身が「いつかはアルピナ」の思いを秘めて見積もりを取りに世田谷のニコル・ショールームへ行ったとき、値引きの話は一切されず「アルピナなら10年ローンも組めますよ」と薦められたことだ。

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自動車ローンを専門で扱う業者の中には120回ローンの設定をうたうところもあるし、残価設定を組み合わせて長期ローンが組めるブランドもあるが、通常、ディーラーでオファーする新車分割払いのローンはせいぜい7年、84回に留まる。車両残存価値が高いアルピナだから、担保価値も考慮しやすいのだろう。

「本物のお金持ちは、お金を無駄遣いしない」というのは、筆者が時折そういう人々に接したときに感じることだ。毎日コーヒーをどこで飲むかさえ、彼らは実はいい加減に選んではいない。「クルマなんて動けばいい」と断言する富裕層は少なくないし、新品を買って年に何十%も値落ちする上、多額の税金まで召し上げられるなんて不経済なものはクルマ以外にない。しかしそんな中でも、BMWアルピナを買うことは最もスマートな消費方法のひとつなのではないかと、長く輸入車産業を見つめてきた視点から筆者は思う。

田中 誠司 PRストラテジスト、ポーリクロム代表取締役、PARCFERME編集長

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たなか せいじ / Seiji Tanaka

自動車雑誌『カーグラフィック』編集長、BMW Japan広報部長、UNIQLOグローバルPRマネジャー等を歴任。1975年生まれ。筑波大学基礎工学類卒業。近著に「奥山清行 デザイン全史」(新潮社)。モノ文化を伝えるマルチメディア「PARCFERME」編集長を務める。

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