自社も競合も丸裸にする「利益」の深堀り分析術 ビジネスパーソンに知ってほしい会計の知識

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最後に、望ましい損益計算書の3つの条件をご紹介しましょう。

営業利益率の目標は5~10%が目標

  • ①売上高が成長していること
  • 加えて、成長スピードも市場や同業の企業と同じか、それを上回る比率になっていることが望ましいです。通常、成長することでシェアが高まり、業界のなかでの地位も上がり、企業も活性化していきます。

    ただ、ニッチや希少性で勝負する企業の場合は、状況に応じて必要だと考える成長スピードを守っていくのでも問題ありません。

  • ②営業利益率が業界の優良企業と比較して遜色ない水準にあること

業界によって違いがありますが、本業の儲けを意味する営業利益率は、付加価値のある製品や商品などを扱っている場合は「10%程度」が目標といわれます。

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一方、コモディティー的な商品・製品を扱っていたり、薄利多売の事業を行っていたりする場合には「5%程度」が目標です。

  • ③営業利益より下の部分で利益率がそれほど落ちていないこと

借入がそれほど多くなく、営業外費用に含まれる支払利息もそれほど多くなっていないケースや、減損損失をはじめとする事業に関連する特別損失が、それほど出ていないケースです。

以上のような状態の損益計算書を毎年継続して報告している企業が「事業の特徴に合った成長性や収益力を確保するとともに一定の安全性もあり望ましい」といえます。

これまでのポイントを押さえ、自社や他社の損益を見抜き、仕事に活用できるビジネスパーソンとしてさらに飛躍されることを願っています。

西山 茂 早稲田大学ビジネススクール教授

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にしやま しげる / Shigeru Nishiyama

早稲田大学政治経済学部卒業。ペンシルバニア大学ウォートンスクールMBA修了。監査法人ト-マツ、西山アソシエイツにて会計監査・企業買収支援・株式公開支援・企業研修などの業務を担当したのち、2002年より早稲田大学、06年より現職。学術博士(早稲田大学)。公認会計士。主な著書に『専門家以外の人のための決算書&ファイナンス入門』(以上、東洋経済新報社)、『ビジネススクールで教えている会計思考77の常識』(日経BP社)、『MBAのアカウンティングがざっと10時間で学べる』(KAOKAWA)などがある。

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