子ども食堂が「悩める大人の救い」にもなる理由 フードパントリーから広がる「救いの手」

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感染拡大を受け、子どもたちを集めて食事を提供することをやむなく断念し、弁当宅配やフードパントリーに切り替えた子ども食堂も少なくない。えび庵ふぁんも昨年5月は、配食を実施した。

しかし、「こんなときだからこそ、いつものように開きたい」と、6月からは三密にならないよう対策をとりながら、これまでと変わらず週1回、子ども食堂を開いている。広い二階家だからなせることだ。

「オープン当初、大人に対する警戒心満々っていうんですかね、私のことをまるで敵のように見ていた子たちがいました。何回か来るうちに、顔つきがだんだん穏やかになっていきました。大人がしんどくなれば、それに比例して子どもたちのしんどそうなレベルも上がっていきます。コロナ以降、密着してくる子たちがいたり、私のそばでごはんを食べたがる子がいるのも、安心したいからなのかなと思います。ここにいてたら、ちゃんと見ててもらえる。ここやったら安心できる、そんな秘密基地のような場所でいたいなと思っています」

なかには、来たいという気持ちはあっても、雰囲気になじめなかったり、恥ずかしくて参加できない子どももいる。また、親の了解を得られないケースも。そうした子たちにも、松尾さんが家を訪ねて言葉を交わしたり、民生委員さんを通じて食材を届けることもある。

なぜ今「子ども食堂」が必要とされるのか?

活動をサポートする大阪市福島区社会福祉協議会職員の丸谷昌広さんは、「子どもたちの笑顔を見ていると、大切な居場所になっていると感じます。年齢の違う子ども同士の交流があること、また子どもの頃からこうして地域の人とつながることは大きな経験になると思います。ご家族以外にも信頼できる特定の大人が身近にいることで、何か困ったことがあったときにも頼ることができると思います」と話す。

子どもは居心地のよい場所なら自然と足が向くようになるが、大人となると最初の一歩が難しい。困ったときに頼れる場所、支援を受けられる場所があっても、助けを求めることに抵抗があったり、どこへ助けを求めていいかわからないこともある。各種支援を実施している役所には心理的ハードルを感じて躊躇することもあるだろう。

ためらう人たちのとば口になれたら――。大阪市中央区の400年の歴史を持つ海寶寺住職の妻、岡部真美さん(34)たちは昨年7月から、「かいほうじフードパントリークラブ」を始めた。毎月1回、米やレトルト食品など1週間分の食材を手渡している。大人同士が言葉を交わす間、子どもたちはビニールプールの中にどっさり入ったお菓子の中から好きなものを選ぶ。

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