「職業」で人の明暗はなぜこんなに分かれるか 消える仕事・残る仕事を決定づける複合的要因

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業界間の動きばかりではない。これからは会社に縛られない働き方も出てくる。ギガワーカーと呼ばれる人たちだ。ギグワークとは、1~3時間の短時間だけ働き、継続した雇用関係のない働き方を指し、ネット上で申し込める場合が多い。隙間時間を利用した都合のいい働き方ができる。プログラミングやクラウドワークス、ランサーズ、うるる、ココナラの大手4大サイトの登録者は、のべ750万人以上に達している。

たとえばフードデリバリーが代表的だ。スマホで受注が確定、自転車やオートバイなどを使って、店舗から顧客の自宅まで飲食物を配達するのが仕事。宅配代行と言えばわかりやすい。目下、外食の自粛で飲食店に行く消費者が減り、代わりにフードデリバリーの需要が増している。ウーバーイーツや出前館、menu、楽天デリバリーなどがある。店舗側もマクドナルドのように、自前の配送網とフードデリバリーを併用している企業もある。

今やフードデリバリーを見かけない日はない。ウーバーイーツののべユーザー数は2020年11月で508万人(撮影:梅谷秀司)

これが意外にもけっこう稼ぐことができる。配達の基本料金は回数報酬+距離報酬。1件500円として、1日20件こなせば、日給1万円。月20日間稼働なら、月収20万円だ。ランチタイムのピーク時や雨の日は、基本料金が上がる場合もある。1km以内の短距離の案件を量で稼ぐのが最も効率がいいとされる。

ただし契約上、配達員は個人事業主の扱いとなり、労働面などで完全に守られているとは言いがたい。基本的には配達の途中で、第三者と交通事故を起こしたとき、飲食物をダメにしたときなどでは、対人・対物賠償責任など補償制度がある。だが、たとえば配達完了後、次の配達までに起こした事故は補償されないなど、注意が必要だ。

結局、好きなことでマネタイズできれば理想

働き方は多様化している。Youtuberは今や、小学生男子が「将来つきたい職業」の上位常連だ(19年は1位、20年は4位。学研教育総合研究所)。億円単位の年収を稼いだり、著名YouTuberがアイドルと結婚したり、話題にも事欠かない。アイドルやお笑い芸人がYouTubeに活路を見い出すなど副業として始めているケースも珍しくない。フワちゃんはYouTubeから地上波へ出てなお成功している例だ。

もっとも競争は厳しい。稼ぎは動画の再生回数による広告収入だが、1再生当たり0.1円とすると、月収20万円を得るには、月200万回の再生回数が必要だ。頂点を見ると、2021年1月に再生回数1位だった「Junya.じゅんや」は月間3.8億回だったが(出所:yutura)、これにはTikTokで国内最多の2400万人というフォロワー数が基盤になっている。今からこの中に割って入るのが難しいのも事実である。

その意味では、自分の好きなこと、得意なことを突き詰めていき、それがマネタイズに結びつけば理想だろう。マイクロソフト日本法人元社長の成毛真氏は「ゲーム実況配信などは、はるか前から先駆者たちがおり、これから始めても遅い。誰もやっていないニッチなジャンルで挑戦し、ディテールにこだわることが近道。あとプロになれるかどうかの差は、どうマネタイズできるかだ」と冷静に見通す。

いずれにしても、仕事選びは、人生を左右する出来事である。ただ今就いている仕事も、環境次第でどうなるかわからない。改めて職業について考え直す機会にしてもらいたい。

『週刊東洋経済』2021年1月30日号(1月25日発売)の特集は「1億人の職業地図」です。
週刊東洋経済編集部
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