家が寒い人が知らない「断熱改修」の意外な効果 既存住宅も夏涼しく冬暖かければ健康にも効く

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アメリカのジョー・バイデン新大統領は就任式が行われた1月20日(現地時間)、すべての国が参加して気候変動対策を進める国連のパリ協定への復帰に向けた書面を国連に提出した。これを受け、グテレス国連事務総長は、歓迎の談話を発表し、アメリカが2月19日にパリ協定に戻ることを明らかにした。トランプ前大統領は気候変動問題に背を向け、昨年12月にパリ協定からの脱退手続きを済ませていた。

パリ協定は2015年12月、パリで開かれた国連気候変動枠組条約第21回締約国会議で採択され、翌2016年に発効。昨年の第26回締約国会議で実施状況の検証や未定のままの実施ルールの細部が決まる予定だったが、新型コロナ禍で会議は2021年11月に延期となっている。

折しも、世界で台風や熱波、山火事などの気候変動に関連した災害が頻発していることから、二酸化炭素の排出を事実上ゼロへと削減する「脱炭素」へと、先進各国は次々に舵を切った。菅首相は2020年10月、就任後初の所信表明演説で「2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」と宣言。ここにきて、既存住宅の断熱改修が重要な政策課題として浮上してきた。

外出自粛の影響で自宅の省エネに関心高まる

国交省は昨年12月、グリーン住宅ポイント制度を創設した。窓、ドア、外壁、屋根・天井、床など既存住宅の断熱改修を行った場合、1戸当たり上限30万円相当のポイントがもらえる。ポイントは、一定の追加工事や商品と交換できる。第3次補正予算に組み込まれており、予算成立後の2月ごろには事務局が開設される予定だ。実際には、工務店など工事を請け負う事業者がポイントの申請を行うことになるが、「コロナ禍で自宅にいる時間が増えたため、自宅の省エネ機能を見直す人が増え、関心が高まっている」(国交省住宅局住宅生産課)という。

環境省も、第3次補正予算と来年度の予算で、既存戸建て住宅の断熱改修への補助を盛り込んだ。1戸当たり120万円を上限とし、断熱改修費用の3分の1を補助する。こちらは、2018年度から行っており、その対象戸数が増える格好だ。実績としては、2018年度1万5065戸、2019年度1万2493戸、2020年度1万0444戸で、これに2020年度第3次補正で2万8000戸(積算上の数字)が積み増しされる。

とはいっても、既存住宅で省エネ基準に満たないのは、11%だった。人が居住している住宅は全国で約5000万戸なので、4450万戸が断熱不十分ということになる。国土交通省や環境省の施策が断熱改修の呼び水になるのかどうか。

費用がかかるということに加え、もう1つネックになるのは「どのような技術があるのか」「どこに頼めばいいのか」が、よくわからないという点だ。本格的な断熱改修のほかにも、自分で材料を買ってできるけっこう効果が上がる方法もある。既存住宅の断熱化が進むには、工務店など事業者の団体だけではなく、基礎自治体や住民団体ができることのメニューを整理して提示するなどの工夫が必要だ。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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