家が寒い人が知らない「断熱改修」の意外な効果 既存住宅も夏涼しく冬暖かければ健康にも効く

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工務店に頼む本格的な断熱改修は、費用が高い。床下に新たに断熱材を張った費用は約40万4000円かかった。内窓やドアの取り換えを含めた総費用は、ざっと270万円。断熱改修は、既築の住宅の場合、平均で約300万円かそれ以上が必要と言われる。菅野家の場合も、そうした価格帯の出費がかさんだ。

とにかく高い。しかも、菅野さんの家は建てた当時としては省エネ性能が高く、窓はペアガラス、リビングには床暖房もある。ちなみに私が住むマンションは2006年に建てられたがペアガラスではなく、1枚のガラス。親が住んでいた私の実家には、床暖房もなかった。恵まれたレベルの家でさえ約300万円かかってしまうとなると、一般的に考えて断熱改修のハードルは高い。

こうした費用がネックになるのか、国土交通省が昨年8月にまとめたところによると、2018年時点で「省エネ基準を充たす住宅ストックの割合」は、わずか11%。一方、新築を対象にした国交省の調査では、2015年度の実績で、住宅全体で断熱性能の適合率は59%だった。断熱性能を含む住宅の省エネ化施策は新築中心に行われてきており、既存住宅は置き去りにされてきた格好だ。

床下(上の部分)に新たに断熱材を張った。(写真:菅野千文さん提供)

健康を左右する建物の断熱性能

人の健康が室温により左右されることは知られている。とくにヒートショックは、冬場に注意しなければならないことの代表例だ。寒い風呂場に入り、血管が縮んで血圧が上がる。湯船につかると今度は急に血圧が下がる。血圧の急な変動は、心筋梗塞や脳卒中につながる。入浴中、あるいはお風呂から上がったときに立ちくらみがしたり、気持ちが悪くなったりしたことがある人も多いだろう。

しかし、ヒートショックは別として、住宅の室温はさまざまな病気や老化現象とも大いに関係があることが、近年の研究でわかってきた。

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